[通常モード] [URL送信]

start

そんな俺の気持ちを組んだのか、幾分低い声で涼也は呟いた。


「オレはバイなんだ」
「え、あ、そうなんだ」


少々驚いた。
初めて会った時も、男の人と居たし、俺を相手している時点で俺と同じゲイだと思ってた。


「だけど、今オレが好きなやつは男で……ノンケだ」
「……うん」
「あいつはオレがバイって知ってるが、会社の奴らは知らん」
「涼也が好きな人って……涼也がバイって知ってるんだ」


涼也は少し遠くを見、多分、その事を思い出しているような、幾分和らいだ表情をした。


「……あいつは幼なじみなんだ。オレがどうであろうと……友達だって、言ってくれた………」


涼也は今、自分がどんな表情をしているのか分かっているのだろうか。
軽く伏せた瞳と眉には切なさ、口元にはその人を想ってる嬉しさが出ている。
その姿は美形なのも相まって、色気が垂れ流しだ。
俺は何だか見てはいけないものを見ているような気がして、思わず目を逸らした。


「って、その話はいい。……オレは黙っているだけで、隠すつもりはない。社員に対してもそうだ」
「?」
「黙ってりゃ、いいんじゃないか。今まで通り。会社にとやかく言われる事じゃない」
「でも、志気が下がるって……」
「『俺はなんにも知りません』って顔しときゃいいんだよ。そのうち飽きる」
「そう、かなぁ」
「そうさ。今は物珍しいだけで、人は思うほど他人に時間を割いている暇はない」


それとも、そう続いた言葉の後に、ニヤリと笑う。悪い笑顔だ、先程の表情と全く違う。なんだ?その顔は俺専用なのか?


「オレの会社来るか?」
「………へ?」


呆気に取られた俺の顔が可笑しいのか、涼也の笑顔が深くなる。

[*前][次#]

8/25ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!