start 8 そんな俺の気持ちを組んだのか、幾分低い声で涼也は呟いた。 「オレはバイなんだ」 「え、あ、そうなんだ」 少々驚いた。 初めて会った時も、男の人と居たし、俺を相手している時点で俺と同じゲイだと思ってた。 「だけど、今オレが好きなやつは男で……ノンケだ」 「……うん」 「あいつはオレがバイって知ってるが、会社の奴らは知らん」 「涼也が好きな人って……涼也がバイって知ってるんだ」 涼也は少し遠くを見、多分、その事を思い出しているような、幾分和らいだ表情をした。 「……あいつは幼なじみなんだ。オレがどうであろうと……友達だって、言ってくれた………」 涼也は今、自分がどんな表情をしているのか分かっているのだろうか。 軽く伏せた瞳と眉には切なさ、口元にはその人を想ってる嬉しさが出ている。 その姿は美形なのも相まって、色気が垂れ流しだ。 俺は何だか見てはいけないものを見ているような気がして、思わず目を逸らした。 「って、その話はいい。……オレは黙っているだけで、隠すつもりはない。社員に対してもそうだ」 「?」 「黙ってりゃ、いいんじゃないか。今まで通り。会社にとやかく言われる事じゃない」 「でも、志気が下がるって……」 「『俺はなんにも知りません』って顔しときゃいいんだよ。そのうち飽きる」 「そう、かなぁ」 「そうさ。今は物珍しいだけで、人は思うほど他人に時間を割いている暇はない」 それとも、そう続いた言葉の後に、ニヤリと笑う。悪い笑顔だ、先程の表情と全く違う。なんだ?その顔は俺専用なのか? 「オレの会社来るか?」 「………へ?」 呆気に取られた俺の顔が可笑しいのか、涼也の笑顔が深くなる。 [*前][次#] [戻る] |