start 6 「旭、ごめんな」 俺は一番言いたかった言葉を口にだした。 お前を蔑んだりして。 俺と関係持ってるなんて噂されちゃって。 本当に、ごめん。 『ん、いいよー』 「………俺がなんで謝ってるか解るの?」 『わかんないけど………俺、こうさんの事好きだから何でも許しちゃうー』 俺も好き。 この言葉を軽く言えたらいいのに… 旭が言ってくれた『好き』とは意味が違うんだけど…… 口元を押さえた。 ムズムズしている。ヤバいにやけそうだ。 そして…… 『あ、もしかしてこうさん、今真っ赤でしょー』 「……なっ………!!」 図星だ。 旭の『好き』という言葉だけで染まった頬は未だ健在で、それどころか、新たに朱を増してゆく。 『んもー、こうさんってば可愛いんだから。こうさんも俺の事好きって知ってるからー』 「ばっか、ふざけんなっ!!嫌いだよ……旭なんてっ」 なんで俺が言いたい事わかるんだよっ。 思わず発した言葉は『嫌い』だけど、ああ、全部『好き』に変換して。 くつくつと電話口から聞こえる低い笑い声にドキドキする。 『さっき笑ったお返し。………早く帰って来てね』 「……うん」 甘く囁かれる言葉に思わず頷く。 全くかなわない。 何だか甘い雰囲気に居たたまれなくなり、早々に電話を切った。 電話を切った後、俺は歩みを速めて涼也の家へ向かう。 どんなに違う事を考えても、なかなか頬の朱は取れなかった。 [*前][次#] [戻る] |