start 4 仕事終わりのロッカーで、携帯を開けたり閉めたりして俺は悩んでた。 涼也に相談がある、と言えば快諾してくれ、仕事帰りに涼也の家で会うことになった。 問題は旭だ。 単純にメールにしようか電話にしようかで迷ってる。 この時間だと旭は家に居るか居ないかの瀬戸際だ。 「今、家に居るよ」って電話口で言われちゃうと帰ってしまいたくなる。 そして、きっと旭と過ごせる幸せと、今日安井に言われた言葉や、言ってしまった言葉に自己嫌悪しながら過ごすんだ。 一瞬にしてその時の気まずさ、いたたまれさを思い浮かべて渋面を作る。 そんな思いはごめんだ。 やはりメールなのか? 軽く、今日は来なくて良いって言えばいいのか? だけど、自分の口で「ごめん」って位言いたい。 やはり謝罪はメールより本人へ言葉で謝りたい。 そうとは思うのだが、気持ちとは裏腹にメールを作成していた。 結局の所、俺は旭に直接ウソ付きたくなかっただけなんだ。 ……メールだと、あっさり簡単に偽りの言葉が出てくるから…… 『今日は会社の飲み会があるから、家帰るの遅くなる』 送信。 謝罪の言葉は、後で言おう。だなんて、自分をごまかしながら――― 携帯をポケットに仕舞おうとしたら、着信を知らせる振動を感じた。 ………旭だ。 悩んだ意味がないじゃないか。 俺はそっと溜め息を付き、覚悟を決めて通話ボタンを押した。 [*前][次#] [戻る] |