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◆〜88888HIT CLEAR
5555HITリクエスト
(本館キャラを使ってBL)
「好きなんです」

高校に入って3年目、男にそんな事を言われるのも慣れた。
男子校なのもあって対象が男に絞られるからだとは思うがそれに答える事は出来ない。

「悪いけど、好きな奴いるから…」

ヘタに気を持たせるよりずっと親切だと思う事にして、そんなお決まりの言葉で突き放す。
相手の悲しそうな顔を見て心が痛まないわけでは無いが俺にはどうしてやる事も出来ない。

「ご、ごめんなさい…」

バタバタとその場から立ち去る背中を見送りながらずるずると壁に沿って座り込む。
報われない恋には心当たりがあるから、ちょっとだけあいつの気持ちがわかる。
こんな事が起きる度、俺の心も抉られる。

『悪いけど、好きな人がいるから…』

そんな幻聴が聞こえて胸が締め付けられる。
アイツの顔はその時どんな表情を浮かべているだろうか?
軽蔑?同情?嫌悪?それとも…
都合いいの妄想をして自嘲する。
全ては俺の想像の中だ、実際どうなるかなんて神様だってわかるまい。

「よう彩牙、終わった?」

軽く手を上げて声をかけてくるのは悪友の鰐淵。
今がどういう状況なのか分かっててわざと見に来るあたり本当に性格が悪い。

「見りゃわかるだろ…」

不機嫌を隠さず威嚇するように低い声で話すがちっとも堪えていないようでその表情には笑みが浮かんでいた。

「なかなか可愛い子だったじゃない?」

「じゃあお前が付き合えば」

「俺はもっと体格のいい男の子をヒイヒイ泣かすのが好きなの」

「変態」

吐き捨てるように言う。
ゆったりと俺に向きかえった鰐淵の口には歪んだ笑みが浮かんでいた。

「まだ8歳の妹を本気で愛してるお前ほどじゃないよ」

何の容赦も無く突き刺さる言葉に体がビクリと震えた。
俺は義理とはいえ、本気で妹を愛している。
言葉には出していないとはいえ、変質者以外の何者でもない。
それは事実、だがそれを考えるのも一瞬だ。

「わかってる」

小さく呟いて自分の手を眺めた。



10年後―――

「鰐淵、頼んどいた資料終わったか?」

「あと少しー」

「あと10分以内に終わらせろ」

「了解」

いまだ会社の同僚として俺と鰐淵の関係は続いている。
それ以上でもなく、それ以下でもなく悪友。
変わらない。

時間がずれて誰もいない休憩室で冷たいコーヒーを飲んでいると、いつも通りにやにやといやらしい笑みを浮かべた鰐淵が煙草を咥えながら聞く。

「最近どうなのよ」

「何が?」

「妹さん」

思わぬ言葉に飲んでいたコーヒーを思わず噴出しそうになる。
必死で耐えて嚥下すると生理的な涙が出た。

「もう18歳でしょ、可愛くなったんじゃないの?」

「馬鹿言え、昔からずっと可愛いんだよ!」

「うわー本物ー」

「殴っていいか?」

「やめてー、顔とナニくらいしかとりえがないの」

相変わらず男好きらしい鰐淵との付き合いが切れないのは、こいつは俺を責めないからかもしれない。
肯定されたい訳ではないが責められたくない。

「もうそろそろ結論を出す年なんじゃないの?」

「………」

最近妹の周りに男が多くなり、いつ俺の元を離れてしまうかと戦々恐々としているのを見抜かれているのだろうか?
コイツなら嫌がらせの為に興信所とか雇いそうだから性質が悪い。

「もし駄目だったら俺が貰ってあげるからね」

「…妹に手を出したら殺すぞ?」

持っていた空き缶を乱暴に燃えないゴミに放り込んで、休憩室から飛び出した。
あんな悪い虫がついたら困る。
変態なだけで十分始末におえんのに…。


俺のいなくなった休憩室で

「貰うのは彩牙の方が良いなぁ」

嬉しそうに鰐淵が笑ったのを俺は知らない。



匿名希望様のリクエストで『彩牙を使ったお話』
本館のゲームをやっていない方には不親切でスミマセン、一応文末に補足説明を入れておきました。
匿名希望様、リクエストありがとうございました!
彩牙自身をBLにするわけにはいかなかったので、こんな温々なお話になってしまいましたが、喜んで頂けたら嬉しいです。
一応鰐淵さんは、彩牙をからかってるだけで実際はそこまで性的欲求は感じていないと思います。
が、据え膳が来たら食べる男です。
名前は鰐淵ですが鰐に似ている訳ではないと追記させて頂きますw
本館のゲームをやっていない方には不親切でスミマセン、一応文末に補足説明を入れておきました。



■補足説明■
彩牙は母親の再婚相手の連れ子である天子(妹)が好き。
でも妹好きすぎて手を出すどころか、ちょっとした萌え台詞でもキュンキュン来ちゃうヘタレ。
鮫顔、不憫、高スペックという私の趣味の塊。
鰐淵はオリジナル。


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あきゅろす。
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