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◆〜88888HIT CLEAR
80000HITリクエスト@※R18
(したくなって真実を構うフェデルタ)
「戸籍ですか? 簡単に手に入りますけど」

セルヴァが息をするより簡単だと言わんばかりの口調で言ったので、思わず俺は飲んでいた珈琲を噴出しそうになる。
必死で珈琲を飲み込むと、咽かけながらもセルヴァに詰め寄った。

「簡単なん?!」

「ええ、簡単です。人間の世界の大体は金さえあればなんとでもなりますから」

「あ、やっぱり金か……」

戸籍が欲しい、そう思ったのは理由がある。

「フェデルタの、ですか?」

「そうよぅ、俺は戸籍これ以上いらないもん。」

「俺はたまに戸籍からお前を除外したくなるがな」

「おにーさまヒドイ!」

よよっと泣き崩れる振りをすると、セルヴァが俺と兄貴の間でアワアワと焦っていて可愛らしい。
むちゃくちゃ強いのは知ってるけど、たまにからかいたくなるのはこういう可愛い所も知っているからだろう。

「でさ、具体的に幾ら位?」

「物にもよりますが、足のつかない物・個人にあったものを厳選すると何千万単位になるかと……」

「無理、終わった」

手をひらひらとセルヴァに振って、そのまま後に倒れこむ。
弾力の心地良いクッションに倒れこむとその上から兄貴が覗き込んできた。

「フェデルタに直接戸籍を改ざんさせればいいじゃないか」

「うちの子はそういうの嫌がるんですぅ〜」

「甘やかしているな」

「あたぼーよ!!!」

腹筋を使って起き上がると残っていた珈琲を啜り、菓子鉢に入っていた手作りっぽいクッキーをポケットに捻じ込んだ。

「お帰りですか?」

「うん。俺、どうしようもない事じゃ悩まない性格なの」

「適当な脳みそのつくりをしているな」

「貴方の弟ですから」

にやりと顔を見合わせ、けん制しあう。
兄貴とこうやって遊ぶのも好きだ。

でも1番好きなのが家で待っている。

「ここに来るとセルヴァの能力で気配が消えるとかで、毎回心配してるんだよね、フェデルタ」

「分かってて1人で来たのか、お前」

「だって、フェデルタにサプライズプレゼントしたかったんだもーん」

「プレゼントが戸籍って……」

「斬新でしょ?」

「斬新過ぎてついていけないんじゃないか?」

「いいんだよ。んじゃ、ごちそうさん」

そう言って立ち上がると見送る為かセルヴァも一緒に立ち上がる。
兄貴は悠然とソファーに座り紅茶に口をつけたまま、おざなりに手を振った。
見送るくらいしてもいいんじゃない?

「俺が都合しましょうか?」

「ん?」

「こちらの世界で活動する際に必要な金銭や情報ルートには伝手がありますし、真実さんが望まれれば戸籍位……」

「駄目ー」

「駄目ですか?」

「俺が上げたかったの。別にフェデルタが欲しいって言った訳じゃないし、それに」

「それに?」

「セルヴァにしてもらったなんて言ったら、また負けたって拗ねちゃうよ」

「そ、そういうものですか」

「そういうもんだよ。俺や兄貴みたいにプライドの低い奴ばっかりじゃないからね」

「プライド……低いですか?」

「見方によっては、ね」

渡された靴べらをセルヴァに返しながら、ドアを開けた。

「じゃ、またねー」

「あ、はい。またいらっしゃってください」

何かを考えていたらしいセルヴァを置いてドアを閉める。
閉まる直前の扉から「低い……かなぁ?」と疑問系の言葉が漏れ聞こえて少しだけ笑えた。

本当に欲しいもののためなら、自分のプライドなんて軽く捨てられる人間のプライドが高いはずはない。
地面に這いずり、あらゆる罵倒を受けたとしても、手放せないものがある。

「さ、かーえろ」

ポケットの中のお菓子を軽く叩くと、これをお土産だといったら機嫌直してくれないかななんて甘い事を考えた。
直さなくても、まあ、楽しいのだが。

「せめてどこに出かけるか言ってから行ってくれ」

自宅の扉を開けると目の前にフェデルタがいて流石の俺のちょっとビビッた。
不機嫌そうに見える表情の中に、心配が含まれているのが分かり、不謹慎ながらゾクゾクする。

「ゴメンねー」

「悪いと思っていないだろう」

「うん」

首に腕を絡めて軽く引き寄せるとフェデルタの頬にキスをした。
チュッと音がする軽いキス。

「これで許して、ね」

ポケットを探り持ち帰ったクッキーをフェデルタの掌に落とす。
これ以上言っても無駄だと悟ったのか、しょうがなくといった表情で俺の頭を数度叩いた。

「心配した」

「ありがとう、ゴメンね」

今度はちょっとだけ、悪いと思って謝った。



「あ、美味い」

兄貴の家と違い本格的な珈琲じゃなくてインスタントだけど、クッキーのお供にとフェデルタに渡すとお礼をいい受け取った。
とはいえ、美味しいのは珈琲ではなくクッキーだ。

「そうなんだ、俺兄貴んちで食わなかったからな」

「真実も食べるか?」

「フェデルタにあげたからフェデルタが喜んでくれたら嬉しいよ」

「そうか、ありがとう」

そういって少し冷たさのある端整な顔立ちを柔らかく緩める瞬間が好きだ。
俺の事が好きだから、心を許しているからこその油断した表情。
釣られて俺もニヤニヤしてしまう。
俺から見れば薄ぼんやりとしたにやけ顔なのだが、フェデルタから見るといい笑顔に見えるらしい。
なにかのフィルターの存在が感じられる気がするが、一生取れなければ問題ないだろう。

「食べ終わったら部屋でだらだらしようか?」

「そうだな、真実も今日はバイトがないなら体をゆっくりと休めた方がいい」

「そうするー、……セックスする?」

「体 を 休 め ろ と言った気がするんだが」

「ちぇっ」

「全く……」

誤魔化す為に飲み終わった珈琲カップを洗いに行くけど、少しだけ耳を赤くしてるのバレバレなんだよね。

「……かわいい」

聞こえないように呟き、カップを洗うフェデルタの後姿(というか主に尻)を堪能する事にした。


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あきゅろす。
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