◆〜88888HIT CLEAR
10000HITB-1 ※R18
(獣人×人 最初無理やり)
人が獣人に支配される時代。
ノルリーフの街も例外なく獣人に支配されていた。
ただ普通に暮らしている時に干渉してくるわけではなく、必要に応じて人を獣人の町へと連れて行く。
その後その者たちは誰1人として帰ってこないが、人々はそれに異議を申し立てる為の、爪も牙も持ち合わせていなかった。
そのうちの1人に自分がなるなんて『イルサ』思っても見なかった。
「お、俺ですか?」
コクリと深く頷く里長も不思議そうな顔をしている。
今まで連れて行かれたものは皆美人や美形で、俺のような貧相で不細工な者に指名がかかるなんて誰も思わないだろう。
実際自分も思わなかった。
「私も何かの間違いかと思って書状を送ったのだが、間違いないと……」
「は、はぁ……」
食うにしても働かせるにしても中途半端な人材。
見るにしたら最下級の人材だろうに、何に使われるんだろうか?
「イルサ、行ってくれるか?」
申し訳なさそうに里長が尋ねる。
この人は親のいない俺を厳しく優しく育ててくれた恩人だ。
これで恩が返せるなら、それは運命なのだろう。
「俺が行って不興を買わなければいいのですが」
そう言って笑うと里親は、深く皺の刻まれた顔の皺をなお一層深くして悲しそうな顔をした。
俺に縋るように回された腕は細く、この手に散々叩かれて撫でられて育てられた頃から比べると半分もないように思えた。
こんなに細くなっているなんて俺は今まで気付けなかった、……もう遅い。
涙が零れそうになるのをグッと堪えて俺は『父さん』との別れを済ませ、翌朝迎えに来た使者に連れられて生まれ育った里を後にした。
「お前がイルサか」
床に座り頭を下げる俺を、上から見下ろしてそう言い放つ男の頭にはぴんと立った耳があり、背後では尻尾が揺れていた。
逆らう気は無いが、獣人であるなしに関係なく体格差で勝てる気がしない。
正直、怖い。
顎を掴まれ強引に上を向かされるとすぐそばにあった男と目が合う。
金の瞳に縦長の瞳孔、口には牙が生えていて俺ののど位簡単に噛み切ってしまいそうだ。
「貧相だな」
「はあ、スミマセン」
食べ甲斐がない体とは言わなかった。
食べ甲斐がないと文句を言うくらいなら牛でも呼べばよかったのだ。
「触り心地も悪い」
大きな手が俺の頬や髪をガサガサと撫でる。
伸びた爪が刺さるのではと恐怖を感じなくもなかったがされるがままになっていた。
不興を買えば里にどんな被害が出るかわからない。
「おい、誰ぞ湯を用意しろ」
「はっ」
男が立ち上がり誰もいないと思った場所に声をかけると影が揺らぎ、警護のものが出てくる。
(俺がなにかしないかと見張っていたのかな)
そんな事をぼんやりと考えていると腹の下に腕を入れられ、ぐわっと持ち上げられる。
一応成人男性の平均身長は越えている俺だからそれなりの重さもある。
まるで軽い荷物を抱えるように持ち上げるその力にビックリしている間に俺はどこかへと運ばれてしまったのだ。
放り込まれたのは湯気の立ち込める広い部屋でいつの間にか裸にさせられていた。
「調理場?」
調理されるとしても殺されてからだろうと思っていたのに、生きながら捌かれるのだろうか?
そういえば長く持たせるために生かさず殺さず食べる種族がいると聞いたことがある。
ぞわりと背筋を寒いものが走り、汗が伝う。
「風呂だ」
「ふ、ろ?」
かけられた声に振り向く。
がそれを目視した瞬間、思い切り後ずさる。
先ほどの獣人の男が立っていたからだ。
しかも、全裸で。
「な、あ、え?!」
「来い、体を清めてやる」
来いと言いつつ俺を迎えに来ながら、男の手が俺を引っぱる。
ゆっくりと溜められた湯に男が入りそれに続いて俺が入ろうとするが、
「っ――!!!!!」
「どうした?」
「熱い!!!!!」
男が平然とした顔で入るから温いと思っていたのだが、その温度はビックリするほど熱かった。
男の手が傍にあった器具を取り、何かしらを見て首を捻る。
「40℃ほどしかないが?」
「体を綺麗にするなら水でいいです、俺」
掴まれた腕の限界まで湯から離れる、中で茹でられるのはごめんだ。
「人が死ぬような温度じゃない」
強引に引かれ、湯につけられる寸前でなんとか踏ん張る。
「いやです、殺すならさっさと殺せばいいじゃないですか!」
(茹で殺しとかダシが出るじゃないか。どうせなら美味しく食べろよ)
「意味がわからん、怖いのならゆっくり入れてやるから」
そう言うと男の手が俺の脚を取り、抱きかかえる格好になる。
ふわりと浮くように抱えられた俺の体はいつの間にか湯の溜められた場所の端までつれてこられていた。
「ギャー!!! 人殺しー!!!」
「死なんと言っているだろうが!!!」
俺を抱えたまま強引に座り込もうとする気配を感じ、来るであろう熱さにギュッと目を瞑った。
湯が触れ、ビクリと体震える。
が、
「あれ……、熱くない」
「水の注ぎ口の傍だからな」
体に触れる湯は温く、少し温んだ水と言っていいくらいの温度だった。
「全くわざわざここまで運んでやったのに人殺しだのなんだの……」
ブツブツと文句を言う男は、先ほどの印象よりも幼く見えてちょっと可愛かった。
もしかしたら歳も近いのかもしれない。
「……ごめんなさい」
素直に謝る。
本来は逆らってはいけない立場なのだ、それなのに抵抗・暴言、罰せられてもおかしくない。
「許さない」
体がグッとつかまれ湯に肩までつけられる。
「体が綺麗になるまで許してやらん」
そういって笑った男の顔は意外なほど優しかった。
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