リク8 その1
「新しいオモチャ仕入れて来たから一緒にヤろうぜ!」
試験前の寝不足の頭に能天気な原田の声が不快に響く。
だが不快な原因はそれだけではないだろう。
まるで遊びに誘うような口調で恋人である俺に身体を拓けという態度が気に食わない。
「帰れ」
それじゃなくても身体は玄関まで来客を確認するのも億劫なぐらい疲れているのに、さらに体力を消耗するセックスなんてやっていられない。
閉めてアホをシャットアウトしようとする扉を、原田の手がグワッとつかんで引き留めた。
「ちょ、おま、恋人が訪ねて来たのにそれはないでしょ!」
閉めようとする俺と開けようとする原田。
原田の方が力はあるけれど、内側のドアノブに体重を乗せて引っ張れる分、俺の方が若干有利か。
ギリギリと力を拮抗させながらお互いに引く気はない。
「もうすぐ試験なのに遊んでる場合じゃないだろうが! 俺よりも原田の方が成績危ないだろ!」
「ほら、そこは春日部が不思議な力で何とかしてくれるって信じてるから!」
なんじゃそりゃ。
多少でも自力で努力している姿が見れれば手伝いぐらいはしてやるが、頑張ってすらしていない奴に力を貸す気なんてさらさらない。
不思議な力で何とかして欲しいのは俺の方だ。
「もう一年遊べるドン!」
「やめて!!!」
・
・・
・・・
結局、最終的には持久力のある原田に負けてしまい強引に部屋まで入り込まれてしまった。
しかしお互いにぜいぜいと肩で息をしながら、玄関先で転がっているありさまだ。
あー、廊下のタイルが冷たくて気持ちいい。
「なんでこんな事で無駄な体力を……」
「春日部が素直に入れてくれないから、入れたいのは俺だけど」
「お前って奴はそんな事下品なネタしかないのか」
「だって俺、下品なの大好きだし。それに春日部だってそろそろ溜まって辛いデショ?」
「……っ!」
寝転がっていた俺の身体に原田が覆いかぶさる。
逆光になって表情はよく見えないけれど、その口元は間違いなく笑みを湛えていた。
普段の明るい原田の笑みとは違う、なにか含みのある笑みに背筋がゾクリと震え、床を掻いた指先が冷たくなるのを感じる。
いつもと違う原田が怖い筈なのに、なぜか俺の心は高揚していた。
「簡単になら一人で処理できても春日部クンは甘ったれなドMだからー、俺のおちんぽで虐めて貰わないとスッキリ出来ないよねー」
ジーンズの上から荒々しい手つきで金玉を揉まれ、股間に鈍い痛みが走る。
それなのに俺の身体は硬い布地をなぞる指先に震え、男の急所を乱暴に揉みしだかれる事に快感を感じていた。
「ふ……っ、う、ぁ……」
「あれ、いつもよりも感じやすくない? シテなかったの?」
「だから、試験前だって言ってんだろ!」
「こんなに感じやすくて淫乱な身体だから心配だなー。春日部の性格だから浮気はしないだろうけど、あんまり溜めすぎるとフェロモンとかでそう」
「でねぇよ! それに風呂は毎日入ってる!」
「風呂とか関係ないんだよね」
「ひ、ぎ……ッ!」
押し当てられた唇が下から上へと首筋を撫で上げる。
耳に近い事で聞こえるスンスンと鼻を鳴らす音は、何かの匂いを感じ取っているのかある一点で止まった。
「匂い、する」
「うそ!」
首筋に触れてから手の匂いを嗅いでみるけれど、特にこれといった匂いは感じない。
潔癖症ではないけれど汗をかけば気持ち悪いし風呂には毎日入る。
下着だって毎日変えてるのに自分には感じられない匂いがしているのだろうか?
「するよ、すげぇエロい匂い。首筋は二番目に濃く感じる」
「一番目じゃなのかよ」
「一番は股間ですし」
「ひ、えっ?! ちょ、ちょっ、まてっ!」
俺の身体をなぞるようにして原田の身体が下へと向かい、明確な意思を持ってある一点で止まった。
すでに反応してゆるく勃ちあがった股間を鼻先が這い、唇で幹を挟むように刺激される。
唾液が布にしみ込んで下肢がひやりとして感じられるのは、自分の身体が火照っているからなのだろうか。
犬のように股間に顔を突っ込まれて匂いを嗅がれる。
絶対にいい匂いなんてする筈のない汚い場所を暴かれる背徳感に太ももの内側が痙攣しそうだ。
「やっぱりここが一番濃い匂い」
「へ、変態……」
「そうですけどー?」
原田の手が俺の片足を掴むと立膝にする。
何をするのかと見守れば、その足に自らの腰を擦りつけた。
ゴリと足に当たる感触は間違えようもない。
「何で勃ってるんだよ!」
「お前が溜まってるって事は俺だって溜まってんだよ!」
「一人で抜けよ!」
「断る! 下半身ユルユル節操なしのエロい事大好きな俺だけど浮気とかしたらお前が泣くからしないですし?! でも春日部の体温とか知ってるのに一人でしたくないじゃん! それなら春日部とスルしかないじゃん!」
「く、クズ野郎」
「いいじゃん、しようよー」
ゴリゴリに勃ったペニスを俺の脚に擦りつけながら甘えた口調で強請る原田はまったくもって可愛くない。
だけど脚に触れるペニスの熱が俺にも移ったのか、下肢が疼くのは止めようもなかった。
「……たら」
「ん?」
「終わったら、お前も勉強しろよ。お前だけ留年して後輩になったら別れるからな」
「!!! うん、絶対勉強する!」
返事だけはいいんだよなぁ……。
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