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リク7 その3
その場で事にいたろうとするディアズ様をなんとかなだめて場所を移す。
露出狂でもないし、いつ使用人が入ってくるかわからない場所でするつもりはない。

服を脱いでベットの上に座ると、糊のきいたシーツはパリッとしているのに肌に心地よく、やわらかい布団に身体は沈んだ。
なんだか面白くなってしまって上下に身体を動かしながら弾む感触を楽しんでいると、クックと堪えるようなディアズ様の笑い声が聞こえる。

視線を笑い声の方へ向けると、身に纏っていた衣服を脱ぎ去ったディアズ様が目に入った。
いつも思うけど、この均整のとれた身体、かっこいいよなぁ。

「なんスか」

「いや、ずいぶんと可愛らしい事をしているなと思って」

「だって俺の部屋じゃ狭くてベッド置けないし、置けてもこんなよく弾むベッド高くて買えないですもん」

「ここに住めば幾らでも使えるぞ?」

「それ以外が高くつきそうだから止めときます」

「つれない奴だ」

ディアズ様の部屋に住んだりしたら、体力が持たなくて死んでしまう。
今の状態だって圧倒されているのに、常にそばに居たらと考えるだけで疲れる。

店長もディアズ様も、癖が強すぎるのだ。
もっとあっさりさっぱり……、してたら彼らじゃないか。

強引に迫られたという経緯はあっても、なんだかんだ俺は彼らが嫌いじゃない。

本当に嫌なら多分逃げる術はあったと思う。
それでも逃げなかったという事は俺の中に多少でも好意を持ちそうな予感があったのだと思いたい。

「ディアズ様」

「うん?」

「手加減して下さい」

「……アイツみたいに、か?」

ディアズ様の表情が曇る。
珍しく2人になったのに店長の事を出されたと思ってムッとしているようだが、それはディアズ様の思い違いだ。
俺はゆるゆると首を横に振ると、ディアズ様の目をまっすぐ見て話す。

「いえ、店長の事とは別に。俺、替えがきかないんで、大事に使って下さい」

「なんだか嫌な言い方するもんだな、自分の事を卑下してるみたいに聞こえんぞ?」

「そういう意味じゃなくて、えっと、なんて言えばいいのかな……、大事に、長く?」

「ん、よくわからん?」

俺もよくわからなくなってきた。
伝えたい事はあるのだけど、上手く言葉に出来ないし明確なビジョンもない。

それでもなんとか伝えようと、自分の貧困な語彙から必死に言葉を探し出す。
それは近いけれど、なんかちょっと違う。

「末永く大事にしてください?」

「プロポーズか?」

「違います」

「紛らわしい。違うだろうなとわかってても心臓が破裂しそうだ」

「ぶにゃっ」

ディアズ様の手が俺の頬を軽くつまむと、むにゅりと押した。
軽く圧された頬で唇がタコのように尖り、顔はくしゃりと歪む。

「にゃにするんれすか」

「うっせ、罰だ、罰。純粋な男心を弄びやがって」

「やめへくらはいよ〜」

むにゅむにゅとつぶされる頬は痛くないけれど、きっとすごく変な顔になっている。
なんとか手を離してもらおうとディアズ様の手を軽く引っ張るが、案の定びくともしない。

全裸の男2人がベッドの上で、ナニをするでもなくいちゃついている光景はきっと不気味だろう。
だけどなんかこういう穏やかなのも楽しい。

(ディアズ様って意外と普通なのかもな)

俺の中で上級魔族というのは弱者を近づかせない気難しがりやが多いイメージだったのだが、ディアズ様や店長と交流するようになってから少しだけイメージがやわらかくなった。

上級魔族だって仲がいい奴には親しく話すし、苦手な奴と話す時には棘がある。
下級魔族の俺と全然変わらない。

「頬っぺたやわらけー」

ディアズ様がこうして警戒心のない笑みを見せるのも、心を許したごく一部だけだ。
そうされたいと意識している訳じゃないけれど、特別扱いはやっぱり嬉しい。

見えない位置から触手を伸ばし、ディアズ様の背中をツンツンとつついた。

「うおっ?!」

慌てて俺から手を離し振り向いたその隙を逃さず……、

「ぐわっ!」

ディアズ様に飛びついた。

安心していたのと後ろを振り返っていたせいで、体勢を崩したディアズ様はそのままベッドに倒れこむ。
もちろん俺はその上だ。

「何してんだ?!」

「仕返しっすよ」

「あ゛?」

「やられっぱなしは性に合わないんで」

ディアズ様の上に乗ったまま、シュルリと触手を動かして彼の下肢をなぞる。
引き締まった太ももは触手が触れるとヒクンと敏感に反応し、その動きが上に乗っている俺にまでダイレクトに伝わってきた。

一線は退いたものの少し前まで店で働いていた俺の愛撫で感じない訳がない。
なによりお得意様のディアズ様が感じる所なんてほとんど把握済みだ。

身体を軽く揺らし腹と腹の間で緩く勃ちあがったディアズ様の男性器を刺激しつつニヤリと笑う。

「お、まえ」

「気持ちいいッスか、お客様」

絶対に気持ちがいいのがわかっていて、わざとらしく確認してやる。

淫魔だから自分が気持ちいい事はもちろん大好きだけど、人を気持ちよくするのも大好きだ。
気持ちの良さを感じている人の放つ魔力はとても俺たち淫魔に心地いい感覚を与えてくれる。

他人にも自分にも気持ちがいいなんてすごくいい。
それがディアズ様みたいな極上の魔力の持ち主なら最高。

「ねえ?」

「最高だよ、畜生」

俺に向かって伸ばされた手は今度は頬ではなく、腰に触れ、優しく怪しく俺の身体に触れた手はゆっくりと下に向かって動き始める。

「ん、あ……」

優しい時間の終わりを肌で感じ、この後に来るとろけるような快楽を期待して、俺は口元にうっすらと笑みを浮かべた。



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