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リク6 その4
「んァッ……、ん、く」

指で慣らされた後唇に栄太郎のペニスが触れる。
栄太郎が俺に酷い事をするはずが無いのを知っているのに、痛みを知っている俺の身体は自然とこわばってしまう。

変に身体に力を入れれば、辛くなるのは自分だとわかっている。
それでも指先がかすかに震え、足の先まで力が入っているのがわかった。

「慣れないな」

「……ごめ、ん」

俺の頬に張り付いた髪を栄太郎の指が優しく避ける。
こんなにも優しく触れてくれるのに、どうして俺の身体は怯えてしまうのだろう。

「うん? 俺は楽しいが?」

「へ?」

「いつまで経っても初心で、可愛い」

「なっ?! ふざけ、んん…ッ!」

唐突に挿入されたペニスに、反論しようと開いた口から零れたのは紛れもない喘ぎ声。
逆流する熱の塊がゴリゴリと内壁を拡げていく。

「く…ひっ、あ…ァッ!」

浅く探るように動くペニスがある一点を突くと、堪えきれず鼻にかかった嬌声が漏れる。
緩く突かれるたび快楽で身体は戦慄き、目の奥が白くチカチカと点滅した。

強い快楽は怖いぐらいで、不安に駆られた俺は栄太郎に縋ろうと手を伸ばす。
栄太郎はそんな俺に気付くと俺の手に大きな手を重ねた。

骨がくっきりと浮かんでいて、俺より少し大きくて、ずっと綺麗な手。
爪の先まで当たり前みたいに手入れされて、荒れたところなどない。

仕事をする上で人に会うからだろうか?
栄太郎は足の先から髪の毛先まで身なりにはとても気を使っている。

それに引き換え重なった俺の手は、最近始めたバーテンダーの仕事で洗い物をたくさんする所為かガサガサしていてお世辞にも綺麗とは言えない代物で、面倒だという理由でハンドクリームを塗るのもサボり気味だ。

「どうした、ボーっと手なんか見て」

「栄太郎の手、綺麗だなって思って」

重ねた手の親指を動かして栄太郎の手の甲を撫でる。
しっとりと手触りのいい肌は飽きる事無く触っていられそうな程気持ちがいい。

この手が好き。
綺麗で、骨ばっていて、俺に優しく触れるこの手が好き。

栄太郎が俺の手を恭しく持ち上げて、俺の指先に口付ける。
もどかしいようなくすぐったさに軽く眼を瞑れば、クスクスと悪戯な笑い声が聞こえた。

「な、なに、なんで笑ってんの?」

「いや、褒められたのは嬉しいんだ。だけど俺が手を綺麗にしてた理由はな……」

手を綺麗にする理由?
人と会う時に見苦しくないように、じゃないのか?

まったく考えが浮かばない俺は答えを求めて栄太郎の顔を見る。

「手がガサガサしているとすべりが悪いだろう?」

「確かにストッキングが伝線するとか聞くけど……」

「尚幸の中を傷つけたら困ると思ってな」


……
………

「はい? ……はいっ?!」

予想外の答えに思考が完全に停止していた。

「えっ、なに、じゃあその綺麗な手は俺の尻に突っ込むために手入れされてんの?」

「いじらしいだろう?」

いや、流石の俺でも……、うわぁ、嬉しいわ。
だって俺の為とか、なんか特別って感じするじゃない?
方向性がおかしいのは俺だってわかってるけど、だって嬉しいと思ってしまうんだからしょうがない。

「……いやらしい」

「それも正解だな。ところでそろそろ動いても大丈夫か?」

「あ」

驚いてつい忘れてしまっていたけれど、栄太郎のペニスが俺の中にいる。
意識すればそれは熱く、硬く、どくんどくんと鼓動すら伝えて存在を主張した。

「自然な動きも気持ちいいけれど、尚幸の中をもっと堪能したい」

「ひっ、や、ぁあ…ッ」

グッと腰を進められ、ペニスが内壁を擦りあげる。
ジェルで濡れた結合部が擦れ、にちゅといやらしい音を立てた。

「えいたろ、ちょ、っと待ってッ!」

「まだ痛い、か?」

心配そうに尋ねる栄太郎に、首をぶんぶん振って否定する。
痛いどころか気持ちよくて、気持ちよすぎておかしくなってしまいそうだよ、ちくしょう。

「栄太郎、明日……、お休み?」

一瞬きょとんとした栄太郎が、俺の言いたい事を理解してニヤリと笑う。

「勿論」

さすがエロエロ魔人、手回しも完璧で。

でも俺も1回や2回じゃ我慢できない。
たった2週間、されど2週間。

声を交わしたくて、
唇を重ねたくて、
肌を合わせたくて、堪らなかった。

「じゃあフルコースでオネガイシマス」

「贅沢だな」

「金持ちだろ、奢れよ」

「……、残すなよ?」

軽い口調で応酬しながら笑いあう。

俺達は立場が違って常に一緒にいられる訳じゃない。
きっと2週間以上離ればなれになる時もあるだろう。

だけどきっと大丈夫。
なんの確証も無いけれど、俺はそう思う。

「ふ……、んく」

好きだと言おうとした口は栄太郎の唇に塞がれて、言葉は熱い舌に絡め取られる。
正常な思考は角砂糖のように溶け始め、明日は起きられないかもしれない。

だけど問題ない。
久しぶりに会った恋人同士、ベッドの上でするお付き合いはきっと有意義だろう。

それが健全かどうかは答えかねるけれど、それは蕩けるように幸せなはずだ。




らぱんだ様、リクエストありがとうございました!
完結したキャラだったのでまた動かす機会を貰えて嬉しいです。

仕事についてはなんとなく似合いそうなのをチョイスしただけなので、変な表現があったら申し訳ありません。
楽しんでもらえたら幸いです。


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