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リク1 その3
「ぃ゛……っ、あ゛」

衝撃に大きく身を震わせたセルヴァは開いた扉に体重をかけてしまい、扉がガタンと大きな音を立てた。
セルヴァは動き始めたローターの動きに翻弄されているのか、扉を支点に滑るようにしゃがみこんだ。

キョロキョロと辺りを見渡し俺を探すセルヴァは、不安そうな表情で凄くそそられる。
しゃがみこんでいるセルヴァからこちらからは見えないが、こちらからはその全身が確認出来た。

こういう意味でもコンビニというのはまったく便利なものだ、万引き防止のミラーまで付いているのだから死角に潜んでもその姿が良く見える。

凄まじい音ではないものの人のいない店内では悪目立ちしてしまったらしく、レジにいた店員がチラリとそちらを注視する。
力なくへたり込んだセルヴァに眉を潜めた店員は、足早に冷温棚に近づいた。

裏のすれたスニーカーがペタンペタンと音を立てて近づくのに気付いたセルヴァが、ビクリと身体を震わせて立ち上がろうと腕に力をいれる。
強い快楽を感じているのだろう、立ち上がろうとする脚は小刻みに震え、生まれたての小鹿のようだ。

応援したくなるような庇護欲をそそるような、その姿を見て俺はほくそ笑む。
他人の努力は根底から崩すのが楽しい。
それが自分の思った通りに全壊した時などは得も言われぬ快楽を感じてしまう。

ポケットに手を入れると、リモコンの側面に付いたメモリをカチカチと鳴らし弱から強にあげた。

「ひっ、〜〜っ!!!」

声を抑えようと口を押さえたセルヴァが、再びその場にへたり込む。
しかも以前とは違い手が扉にかかっていない為、床に思いきり尻を打ちつけてしまう。

「くひ、……ぃ!」

喉の奥から堪えるような喘ぎ声が零れ、ヒクヒクと喉を戦慄かせた。

「あの、大丈夫ですか?」

店員が床にへたり込んだセルヴァに話しかけると、声に誘導されるようにセルヴァがゆっくりと店員に顔を向ける。

「……っ!」

(おや、これは随分と……)

店員はそのセルヴァの顔を見て息を飲む。
それも無理からぬ事、快楽に蕩けたセルヴァの表情は、一緒に暮らしその表情を見続けた俺ですらゾクリとするような被虐に濡れた顔だ。

性別なんて問題にならない程の色気を醸すセルヴァに、店員が手を伸ばした。

なにか操られているかのように
光に誘われる虫のように
まるで引力でも持っているかのように

無意識にその美しい者に触れようと手を伸ばす。

「セルヴァ、大丈夫?」

務めて明るい声で話しかけると、店員とセルヴァが弾かれたようにこちらに顔を向けた。
何も悪い事などしていないのに店員はワタワタと慌て、セルヴァから半歩ほど距離を取る。

「ぁ……、正義、さん」

「立てる? ほら、肩貸してあげるから」

すぐ傍にしゃがみ、腰を掴んで立ち上がらせる。
軽く触っただけでもわかるぐらい体温は熱く、少し汗ばんでいるようだ。

「すみません、このコ少し貧血気味なんですよ」

「えっ、ああ! そ、そうなんですか、お大事に」

俺に突然話しかけられた店員が慌てて返事をする。
その慌てふためきように内心でクスクスと笑う。

実際にセルヴァが貧血な事実はない。
健康状態なら良好だし、身体の丈夫さなら人間など太刀打ちが出来ないレベルだろう。

「っ、ふぅ、……ぁ」

プルプルと可愛らしく揺れる指先が俺のシャツを掴んで皺を作るのも構わず、セルヴァは俺に縋りつく。
まるで小さい子のような姿はとても可愛らしく、俺以外に頼る者の居ない事実が嬉しい。

「ゴメンね、買い物終わらせて帰ろうね」

「は、…い、ぃ」

胸元に額を擦り付けて甘えるセルヴァを軽く撫で、冷蔵棚からペットボトルを掴んでカゴにいれる。
セルヴァが飲み物を選んでいる間に適当にカゴに入れておいたものとあわせてそれなりの金額になるが、迷惑料も合わせてこれ位でも安いぐらいだ。

レジで会計をしている店員は赤い顔でこちらをチラチラ見ているのを、セルヴァは気付かずに俺の身体にもたれかかった。
クイクイと腕を引いて不安げにしているのを、髪を梳いてやる事で安心させる。
構われて嬉しいのか撫でられた猫のように、手の平に頭を擦りつけた。

店員はそんなセルヴァの顔を見ながらモゾモゾと居心地悪そうに身を捩る。
どうやら大学生であろう店員には刺激が強かったのか、その股間はうっすらと勃ちあがる兆しを見せていた。

(まあそれも仕方がないか)

非常に不快ではあるものの、彼の想像まで咎める気はない。
魅力的な恋人を手に入れた男として受け入れるべきデメリットだ。
それに彼は今日の功労賞、少しぐらいなら礼をするべきだろう。

気持ち良さそうに身体を寄せるセルヴァに気付かれないように背面に腕を回すと、布地の上から後唇を指の腹でなぞった。
いまだに振動の止まっていないローターは、肉の圧力で少し滑り落ちていたのか指に簡単に触れる。

「…ぁっ!」

吐息に似た喘ぎは店員の耳にも届いたのだろう、持っていた菓子をぽとりと落とす。

「す、すみません!」

「ああ、いいですよ。そのまま会計して下さい」

にこやかに答えながらセルヴァの後唇にローターをググッと押し込んだ。

「〜〜〜っ!」

プルプルと震えながら俺に縋るセルヴァの顔はトロトロに蕩けていて、誰が見ても明らかに快楽を感じている顔。
店員はコクリと唾を飲み、セルヴァの方を信じられないものを見る目で見ていた。

「細かいの無いんで1万円でお願いします」

このコンビニの中で正常な意識を保っているのは俺だけで、俺が1番狂っていた。



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