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「俺は男なんだから。あんたはホモなんだって」


「お前もだろーが」


「そっスけど………」


その後困ったように唇を尖らした宮城は、俺が好きなのは三井サンなんであって、男が好きなわけじゃないと、まさに矛盾した言葉を続けた。

男が好きな訳じゃないけれど、アンタは好きなんだと言う。
宮城自身も深く考えれば混乱しそうで

それ以上は考えない。
考えたところでそんなことには意味もないはずで。
好きになったのがたまたま男だっただけ。都合の良い解釈に逃げているのかも知れないけれど、それがホモだと言うならそうなんだろう。<<別にどうだっていい、そんなことは。

大切なのは

アンタと俺が過ごす、これからの時間であって
アンタのそばにいることだから>>

「て言うか、アンタは俺がいねぇとまた道踏み外しそーだから?」
正確に言えば
俺がいたからアンタは
道踏み外したんだっけ。
どう考えても今の俺とアンタは
普通の男子高校生じゃねぇんだもん。
ボソッとさり気なく。けれど本人に聞こえるように。
そしたらいつも通りの抗議が始まって…
変わらない日常が一番いい。
こうして二人でずっといられるならの話。

そうじゃないのを知っているから
なんで学年が違うんだろう
どうして同じバスケをやってたのに
何度も行き違ったんだろう

アンタは俺より早く
確実に、どっかに行ってしまう。

“卒業”逃れられない事実が
何ヶ月か先には待ち受けていること。

アンタは分かってんのかな。

「到着」


「…公園で何する気だ?」

「え………スル?」

「し、ねぇよ!!」

公園に設置された木のベンチ。
街灯一本と列んで立つ。
月明かりに街灯。
たまに吹き込む寂れた風。

「こーしてるとデートみたいじゃないスか?恋人同士みたいっしょ」

そうやって嬉しそうに笑う宮城の顔を見ていたら、言葉にならなくて胸がチクリと痛んだ。

「夜じゃねぇとアンタとこうして堂々と歩けないからさ」

「お前デートしたかったの?」

「したことねぇし…それらしーこと」

だったらもっとちゃんとしたトコ連れてってやったのにって言ってくれたのはホント嬉しかったけど

俺はそんな大それたとこに行かなくてもいいんだ。

公園で散歩コースでもー充分すぎるくらい。

「ここで甘いのください」

決心が鈍る前に
応えを待たずに
腕を伸ばして
それを絡ませて
足らない身長差を必死に埋めて

キスをする。

唇が震えてしまったのは、背伸びをしたから。きっとそうだ。

そっと離れた影が
街灯の元に照らされたシルエットになる。

「これでいいッスよ」

甘いかどーかなんて
一瞬のことで味わう間なんかなかったけど

今こうしてる瞬間は溶ける程に甘ったるい。

「道、踏み外させてゴメンネ」

「いまさらなんだよ」

それから、二人で少し話をした。
二人の出会いが甘さの欠片もなくてバイオレンスだったこととか
思い出したら可笑しくて。

これからのこと、とか。考えて。

道を踏み外したのは確かだけど、
いろんなものに出会わせてくれたのもお前だと三井サンは言った。

たまたま俺が目について、たまたま気に食わなくて、シメてやろうと思ったらバスケ部に引き戻されちゃったって

結果的には全て
俺を中心に運命の波が渦巻いていたわけ。

「甘くねぇよな……」

「……口直しになんか甘いモン奢って下さいよ」

「口直しだ…?
俺のチュー返せ!」

卒業まであと数ヶ月。
甘くない俺と三井サンの関係は
いまだ継続中。

コンビニへと向かう間、三井サンが照れながらも俺の手を引いてくれるうちは

未来がどうであろうと
いいやと思えた。


END.



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あきゅろす。
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