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「おい。」
三井さんに釘付けになった俺に気づいたのか、空のコップを置くといつものあのキツイ目で俺を見てくる。
「俺はもう寝るぞ。」
“え?”
俺の今の顔はさぞかし間の抜けた顔だろう。目をぱちくりさせる。
「だから帰れ。」
“えぇ?!”
「おいちょっと待てよ」
俺はベッドに身を乗りだす。
「ご苦労さん。じゃあな宮城。」
ニコッと笑い、俺の肩をポンと叩くと、三井さんは布団を頭までかぶり俺に背を向けやがった。
…ふざけんなっ
《ボスッ》
「でっ!!!」
気づいたら俺は目の前の大きな膨らみに拳を打ちつけていた。三井さんが低く唸る。
「あんた今度はちゃんと答えるっつったじゃねぇか!!この野郎」
俺が布団を鷲掴み、声を張り上げると三井さんはガバッと布団をめくり俺の胸ぐらにつかみかかってきた。目が…座ってる。怒らしてるのは俺も自覚してんだ。俺だっていい加減苛ついてる。
気づかねぇこの鈍感男が悪い。
「ゴッ…ゴホッ…今俺は頭が痛ぇんだよ…っ…あんまデケェ声だすな!!」
頭に響く…と小声で付け足すと、困ったように俺から視線をさり気なく外してから俺をベッドから押し退けた。
そして…また布団を頭までかぶりやがって完全なシャットアウト。
「ヘタレ。」
俺は嫌みたっぷりに言い放つ。三井さんは布団をかぶったままで、何も言い返さない。
「…わかった。帰る。」
「おお帰れ。」
“ムカ…即答かよ”
「根性なし。元ヤン。甲斐性なし。バカ。アホ。マヌケ。」
《…………ぴく》
勢いよく布団がめくられたかと思うと、俺めがけて枕が放り投げられた。俺はすかさずそれを受け止める。
「がえ゛れ゛!!」
三井さんが真っ赤になって怒ってる。声が段々かすれて出なくなってきてるのがなんとも哀れだ。
俺の表情はどんどん曇る。三井さんが声をあげて怒るたびに気持ちがしぼんでく。“好き”に対しての答えは?ちゃんと言うっつったのに。なんではぐらかす。
「…三井サン…あんま冷たくしないでよ…。」
ぜぇぜぇ肩で息をする三井さんの表情が変わる。俺の気弱な態度に驚いたんだか、眉をしかめて俯く。
「俺の返事は変わらねーよ…。無理なもんは無理だ。」
あまりにもはっきりと意志のこもったその言葉に俺は引き裂かれる。
もう無理なのはわかった。でも後には退けない。こんなダサいまま帰れない。俺は再び三井さんを見据えてから近寄った。
「じゃあ一回だけさせてくれ」
ああ…また拳が飛んできそうだ。避ける心構えでいると、耳を疑う言葉が届いた。
「…わかった。」
俺は目を見開いて三井さんの肩につかみかかる。
「まぢ?!」
三井さんも目をカッ開いて言った。
「つうかお前はなにをする気だ?!」
三井さんの肩が熱い。火傷しそうだ…。
「え…体と体の結合…」
「結合?!! ゴホッ……」
血管がぶち切れんじゃねぇかと思うぐらいにコメカミに青筋が浮き立っている。
三井さんがくらくらと額を手の平で押さえて倒れかけ、俺はとっさに自分の方へ引き寄せた。
「じゃあ触れるだけでもいい…」
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