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俺の視界に入ってくるものは全てが新鮮─…
あ、これは三井サンのいつもしてるGショックの腕時計…。
ジョーダンのポスター…か。はは。俺もおんなじの貼ってるよ。
三井サンの匂いが部屋いっぱいに広がってる。柑橘系の爽やかな匂い。この人なんかイイ匂いすんだよな…。
そして次に目に止まったのが中学時代の写真。三井サンがMVPに選ばれた時の写真だ。
“こん時の三井サンを俺は知らない”
知らない過去ばかりな気がする。
…で、俺は今
ベッドに横たわる三井サンの目の前にいるわけだが…
正直言うと、触れたくて仕方ない。でもそれはあまりに可哀想だと思った。
俺ってフェアプレイしかしないから。
三井サンに嫌われたくもない。
ただこのガマンも時間の問題だろうな。
俺は、辛そうに呼吸するこの人を見ながら思った。
三井サンの息づかいが耳にまとわりついてくる。
「三井サン、何かして欲しいことある?」
三井サンと目が合う。
「……薬飲ませてくれ。」
「コレ?」
小粒の白い錠剤を三井サンに見せる。
「ああ」
「体起こせる?」
三井サンは被せられていた布団をめくり、腕に力を込めて少しだけ体を起こした。
三井サンの匂いがフワッと俺の鼻をかすめる。ドキッとした…。
「飲ませろ。…んあ」
三井サンはまるで、餌をねだるヒナ鳥のように口をあんぐりと開けた。
《ドクドクドク》
俺は三井サンから目が離せず、緊張した。手にした錠剤を、ツヤツヤと光る三井サンの舌の上へそっと置く。ミントガムの香りがする。キスしたい欲望にかられた。
「んん」
「…え?ああ」
半分だけ水の入ったコップを手にとってそっと三井サンの手元へと持っていく。
三井サンはそのコップを口元に運び、サラッと流し込んだ。飲み込む瞬間、喉仏が上下して、うっすらと血管が首筋に浮き出た。
俺の胸の高鳴りが収まらない。
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