1.ラブアタック
スズメの鳴く
朝の眩しい窓辺に一人の男がたたずむ。
洗面台の鏡の向こうをじっと見て
くぁ、と大きな欠伸をひとつ。
あー、結局一睡もできなかった。ヒドい顔だ。
─あいつが残してった痕がいまだに消えない。
右手首に視線を落とすと、前よりも濃くなった青あざがぷっくりと浮かんでいた。
「バカぢから…」
俺は憎たらしいそのアザをさすりながら考えていた。
あの一件から、宮城は上機嫌になって前よりも俺に絡んでくるようになっていた。
三井さ〜ん!!!
校門に入ったところで奴の素っ頓狂な声が耳に飛び込む。
「!げっ キタ」
俺は首をすくめて身構えた。しかし下手に宮城を邪険にあしらうと後が怖いことを知っていた俺は足を止め、ぎこちなく振り返った。
「………」
後ろから追いついてきた宮城の顔はニコニコと上機嫌だ。
“こいつ…俺なんかまともに寝れてねぇってのに…”
やっぱり俺はサルとは違ってデリケートにできてんだな。なんせMVPシューター三井寿様だから。
「おはよう三井さんっ」
「…おう。」
「…………」
“ん?なんだ?俺の顔になんか付いてんのか…?”
宮城の視線が張り付く。
「三井さん、クマ」
「ん?」
片眉をつり上げて唇を突き出す仕草がなんとも可愛いが、俺は三井さんの顔色が悪いことに気づいた。
「目の下のクマ…すごいっすよ?寝てないんスか?」
と、ここまで問うて俺にもピンときた。
間違いなく俺のせいだろう。神経質な三井さんのことだから考え過ぎて眠れなかったに違いない。
俺は…心のなかで手を合わせて謝った。
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