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“詫びて欲しいのはこっちだ”
相変わらず無神経な人だな…。
俺の気持ちには気づかないふりして上手く誤魔化すくせに。
正面からぶつかってったのに簡単に無かったことにしようとしやがって…
あれだけの醜態晒した今の俺には怖いもんなんかねぇよ。言っとくけど。
“このままじゃずっと平行線だ…”
出来ることなら振り向かせたい。
でも散々言われて拒絶されて…もう無理だろ、どう考えたって。
はっきり無理だとも言われた。
俺は手に入りそうにもない目の前の男を恨めしく睨みつける。結局なにをしようが喧嘩になって終わり。それ以上の進展は見込めない。
「…俺がどんな想いで告ったと思ってんの」
俺は自分が泣きそうなことに気づくと慌てて表情を引き締めた。…途端に宙を舞う物体が俺の顔面めがけて飛んできた。
《バコッ》
「はが!!
痛っ…え!あにすんだ」
鼻を押さえてジタバタする俺を三井さんの腕が押さえつけ、呆気に取られた俺は、気づいたら三井さんの下で仰向けになっていた。
「どーよ。野郎に組み敷かれる気分は。」
なるほど……クソ腹立つ。
殴りてぇ…。
「お前な、こんな風にされて好きも何もねぇだろ。」
…やること無茶苦茶なんだけど、三井さんの目が優しい。
まぁ無茶苦茶なのは俺もだが。
いや、この人は何だかんだ言って優しいんだ。確かに短気だしアホだし自意識過剰のくせに繊細でヘタレなんだけど。
はは。こんだけ言ったらすごい剣幕で怒るだろうな。
「……悪かったな。
ちゃんと話聞いてやらなくて。」
“え…?なに?”
俺はオモチャのように目をぱちくりさせて三井さんを見つめた。
「もっかい改めてちゃんと話聞いてやるよ。」
そう言って不器用な表情で唇をへの字に曲げている。
つくづく罪な男だと思う。
「好きだよ。アホだけど。」
「……最後のは余計だ」と一発痛いのを食らったのは言うまでもないが、この人に俺の想いは通じたらしい。
で、肝心なのはあんたの本音なんだけど…
「あんたはどうなんだよ。」
俺は半分死にかけの脳みそを何とか働かせて言葉を紡いだ。
三井さんはこう言った。その生意気な態度を改めたら考えてやらなくもない、と。
つまり脈ありってことだ。
そんなことなら幾らでもがんばるよ。
落としてみせてやろーじゃんか。
三井寿に俺は惚れ込んでしまってる。
もうそれは相手にも伝わった。
だとしたらあとは突き進むしかない。
開き直ってしまえば、これが自然の感情として受け入れられる。彩ちゃんごめん。俺はどうやら正真正銘の変態みたいだ。
この想いは間違いじゃない。
覚悟しろよ、三井寿。
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