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それから練習が始まってからも宮城とは一言も交わすこともなく一度も目が合うこともなかった。
“あの野郎、避けてやがる”
その態度はあからさまで、周りから見ても一目瞭然だった。
「あの2人今日はやけにミスが多いわね…。明らかにギクシャクしてるし」
「ああ…」
彩子は渋い口調で小暮に言うとメガホンを口元にあて溌剌とした声を張り上げる。
「三井寿と宮城リョータ!!二人ともちょっと来て」
「なんだ?」
「彩ちゃん…」
別方向からおずおずと額の汗を拭いながらやって来る2人。
「あんた達、今日はこのまま残って。さっきから気が抜けてるわよ。練習試合も近いんだから、ここでもう一度引き締め直して。」
「いや…でも…」
宮城は困ったように眉をハの字に曲げる。
“三井さんと一緒はマズいんだ彩ちゃん…”
「口答えしない!!OK?」
「ああ…」
2人を交互に見遣って促すと三井が応える。続いて宮城も渋々了解する。
「よぉーしっ
じゃぁ今日は終了よ!!」
『お疲れさまっしたぁー!!』
他のみんながゾロゾロと出ていく。
「じゃあ最後、鍵閉めて出てね」
彩子はそう言い残すと体育館の扉を閉めた。
静まり返った広すぎる体育館に2人残された三井と宮城はお互い顔を見合わせようとはしない。
「おい。」
最初に口を開いたのは三井だった。宮城の側により低い声で呼びかけるが、宮城は見向きもせずにドリブルを始める。
「おいコラチビッ!!」
「…あ?」
ギロリと三井を一度だけ見据えると、すぐに向き直ってゴールに向かってボールを投げる。
《シュッ──パスッ》
「シカトこいてんなよ宮城」
ドス ドスとボールを床に落としながら三井に近寄る宮城。
「……なにか俺に言うことがあんだろ」
「?もう言ったじゃねぇか。」
ボールを三井にパスすると小さく溜め息をつく。
「なにを?」
「だから俺はアンタのことが好きだって。」
その言葉にピクリと反応する。
「ばっ、そのことじゃねぇよ!昨日のテメェの態度を詫びろってんの。」
三井さんの目が怖い。
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