1.間違いない
─次の日の部活にて─
あれから家に帰ってもなかなか眠れなかった。つか一睡もできなかった。
宮城の野郎、思っきし壁殴っていきやがって…
「怒りたいのは俺の方だっての!!」
ガンッとロッカーに制服をぐちゃぐちゃにしまい込んだカバンを叩きつけると、ふと手首に青紫色になった痕を見つけた。
“これ…昨日の…”
宮城に組み敷かれたときにつけられたアザだ。
「あんにゃろ…」
後輩のくせにふてぶてしい態度をとるわ、ボコボコにされるわ(前歯折られるわ)、犯されそうになるわ……
俺様をいったい誰だと思ってやがんだ。
思い出すと腹の底から怒りがこみ上げてくる。
あいつわ一回シメとかねぇと懲りねぇな…
いや、一回シメようとしてボコボコにされたんだが。
ただ。ただ、あの時の宮城の言葉に嘘があるとは思えなかった。そして部室を走り去るときのアイツの顔………
《そして、あの股間》
「…だめだ。くらくらする。」
眉を寄せてよろよろと更衣室をあとにする。
「……あ」
「……お」
更衣室を出たところで凄まじいタイミングの悪さで宮城と出くわした。
三井が声をかけようとすると三井を押し退けて更衣室の中へと消えていってしまった。
「あ、おいっ」
呼び止めかけたところで今度は別の声がそれを遮る。
「よぉミッチー」
「桜木」
ニカニカとあの顔で笑いながら近づいてくる。
「どうだ、少しは上達したかね?」
「阿呆。俺は元々うまいんだよ。お前こそド素人なんだからしっかりしてくれよ」
ポフポフと肩を叩いてくる手をはらい眉を潜める。
「ぬっ。この天才桜木花道に向かってなにを…」
《ドカッ》
背後から宮城が花道の背中を蹴った。
「おふっ?!
リョーチン?」
「邪魔だ!」
着替えを済ませて更衣室から出てきた宮城はやたらと機嫌が悪そうだ。元々悪い目つきがさらに凶悪なものになっている。
“おいおい頼むぞ…
こんなところで喧嘩すんのは”
唯一、宮城の不機嫌の理由を知る三井は押し黙った。
─気まずい…─
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