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三井はいよいよ不信そうに紐解く手をとめ、宮城を見遣る。

「…俺が好きだとか言うんじゃねぇだろなオマエ」

自分が言い放った冗談みたいな言葉に笑いそうになるが、宮城の様子に押し黙る。

どうにも居心地の悪い空間だ。

そして異様に暑い。

三井の体は火照ったまま汗がひくどころか
ジワジワと体温が上昇している。

この狭く汗臭い空間に三井は苛立ち始めていた。


「おいチビ。帰るぞ」

そう宮城の肩に手をかけたとき
その手を制止するかの様に腕を掴まれた。


「あんたとヤリたい」


「…………。

………………は??!!
なに?!」

カッと目を見開き
これでもかと言うほどに眉間に皺を寄せてたじろぐ。


“好きだ”じゃなくて、なんで“ヤリたい”になるんだよオメェわ…っ

俺はこいつのただならぬ様子に薄々と感じてはいた。
この展開も予測がつく事態だった。
宮城の視線には、もっと前から気づいていたから。

最初は思い過ごしだと思って気にせずにいたが
部活の練習中に頻繁に目が合うようになってからは
俺は宮城を避け始めた…。


それがここにきてコレだ。言い返す言葉が見当たらない。


“頭沸いてんのかコイツわ…”


「とりあえず離せ!!!」

本能だろうか。身の危険を感じた俺は力まかせに宮城を振り払おうと手を振りかざした…が
ビクともしねぇ…。
こんなチビにまさか押し迫られるとは
流石に予期してはいなかった。



そして俺はこの時点ではまだ
最悪の展開を考えてはいなかった。

「三井さん、もしかしてビビってる?
俺が怖いの?」

俺はこの人のこんなに怯えた顔を見るのは初めてかも知れない。さっきから目が泳いでいる。
いつも眉間に皺を寄せて、目をキツく細めて近寄る者に無言の圧力をかけてくるから。
今日みたいに、本気でたじろぐこの人を可愛いとさえ想う。

“やっぱ頭…沸いてっかも。”

「痛っ ばかやろう!!痛ぇんだよチビっ」

バスッと鈍い音と同時に太股に痛みが走る。

「いってぇ…なにも蹴らなくてもいいじゃねぇか」

唇を突き出してみる。

ああ…そんなに顔赤くしちゃって。
俺が今ここでキスしたら、殴られっかな。
いや、100パー殴られるだろう。
凄まじい抵抗にあってから、あの扉から逃げ出して、


それで終わりだ。


もう二度と俺とは口をきいてはくれないだろうし。

目も合わせてくれなくなんじゃねぇかな。

でもあんたも悪いんだよ?三井さん。
あんたのその顔。体。匂い。声。

ぜんぶ俺の理性を狂わせる。

あんた毎日毎日フェロモン撒き散らして歩いてんの。

いい加減気づけ。



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