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三井の思考(元はと言えば俺がアホなこと考えなきゃこんなことには…)
流川の思考(眠くなってきた……)
三井の思考(ああなんか息苦しくなってきた…)
流川の…略(………Zz)
「…ってオイこら流川。まさかこの非常事態に寝ようとしてんじゃねぇだろな…」
「……(むくっと伏せていた顔をあげて)まさに今寝ようとしてたとこだ。」
「寝るな!あと息するな!」
「……」
流川が足元であぐらを掻いて座り込む三井に睨みをきかせる。
「空気うすくなってんだよオマエがいるせいで」
「アンタが連れ込んだんだろ」
流川が盛大な溜め息を吐いて三井の隣へと座り込む。
「…まぁ…そうだけどよ…」
はぁ〜とこれまた腹の底から溜め息を吐いて丸くなる三井。
「…………………」
「…………………」
しばしの沈黙。
そして三井が何か言いかけたその時…
流川が三井の腕を掴んだ。背後で何者かの視線を感じ取る。
「な、なんだよ?」
鈍感な三井には何も感じられないらしく、流川の顔を怪訝に見やる。
「なんかいる。」
流川の小さくもハッキリと意志の籠もった言葉。これには三井の表情が強張る。
「な、何かって…」
霊的なものを一切信じない流川ではあったが、高い集中力を持つ流川は確かに何者かの存在を感じていた。自分の感覚は信じられる。間違いなく2人以外の何者かが潜んでいる。
ただならぬ空気に三井は無意識のうちに息を押し殺した。
(なんだよなんだよなんだってんだ?!)
「やべぇ…肩が痛い…」
ぐぅと肩を掴まれるような鈍い痛みに流川は眉を潜め、前のめりになる。
「おいっ 大丈夫かよ?」
三井が流川を支え、心配げにのぞき込んだ。その時……
『………けて』
(!!!!!)
ほんの僅かだが低く、されど女性のソレで、背後から聞こえてきた。
「うわっ…」
思わず三井は自身の口をふさぐ。
(やべぇ…!なんか知らんがいる!!)
「おい流川!コラ起きろタコ!!いい加減にしねぇか!!」
まるで恐怖の対象を振り払うかのように流川を揺さぶる。そして溜まりに溜まった苛立ちを流川にぶつける理不尽な男…
ドゴッ
「ぐ…え」
三井の拳が流川の腹にクリーンヒット。
しかし流川は反撃するどころか更に三井より低く沈んでいく。
「流川…?」
(落ち着け俺。落ち着け。まずは落ち着いて考えよーじゃねぇか。ありえねぇコトが起こっちまった以上…喚いたところでどうにもなんねぇ…。こーゆう時はだな……)
「流川」
三井は流川の隣に寝ころぶとヒソヒソと何やら耳打ちし始めた。
「なんか気の紛れることしよーぜ」
「…?」
三井の必死な目の訴えに流川は目線を外せない。
気を紛らわせて恐怖心をぬぐい去ろうとする三井の考えだがこの状況下で何をすればいいのやら見当がつかない。
(……………)
さっきからずっと三井に胸ぐらを掴まれていることに気づく。その腕の力は凄まじい…
(怖がりめ)
流川はすっと三井の腹部へと手を伸ばすと、くすぐり始めた。
「あっ…!ひっふはっ!あはははは…ひぃ…っぶははは!」
三井は緊張の糸が解れたように顔を緩ませて転げ回って笑う。
流川の手から逃れようと反射的に転がる三井が可笑しくなり、流川の指の動きも早くなる。ひとまず気を紛らわせる作戦は成功のようだ。
「あっ…ぶはっ…や、やめねぇか!!あははは…っ」
泣きながら笑うことほどつらいことはないかも知れない。
そんな苦しそうな三井の姿に流川のなかで悪戯心が沸々と湧き上がった。三井のシャツが汗でじっとりと濡れている。
そっとシャツをめくり、そこへゆっくりと顔を近づける。
「…おい?」
三井の腹に唇を這わしながら流川は気づいた。自分の体が勝手に動いていることに。
自分の意思はあるのに、体が思うように動かない。いや動いているのに自分の意思では動かせないのだ。
確かに流川は一瞬だけ、こうしてみたいと思った。しかし今実際こうしている自分は自分ではない。まるで何かに憑かれたように……
(なんだ?体が勝手に動きやがる…)
流川の手が下腹部に触れたとき、三井が声を上げた。
「バカッ 何触ってんだよオマエ?!」
何、かと問われれば三井先輩のアレ、だ。
三井はギョッとして固まっている。
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