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「俺が変わりに打ってあげますよ。なんて打つんスか?」
「んじゃ、俺は今完全にフリーだよって打っといてくれ」
「りょーかーい」
“一つ言っとかなきゃならないことがあるんだけど。今付き合ってる男がいるんだ。二年の宮城リョータって言うんだけど”
送信。
ハッハッハ!ざまーみろ。これで明日からアンタの人気はがた落ちだ。俺もアンタと一緒に奈落の底まで落ちてやる。短かったなぁ?近頃やけに黄色い声援を浴びるようになったアンタはついにモテ期到来かって喜んでたっけ。
俺をアテにしたアンタが悪い。
「送っときました」
携帯返却。
「おお、さんきゅ」
俺は素知らぬふりでまたイヤホンを耳に。そう、耳にふたして良かったよ。直にアンタの怒声を浴びてたら絶対鼓膜破れてたね。数秒して空気が震えた。
キーンて耳鳴りがするぐらい、震えた。
「うわぁぁぁーー!なんてことしてくれたんだよお前ぇぇぇ!」
うるせぇ!道連れにしてやる!
俺が今まで味わってきた分苦しめ!俺が受けてきたショックはそんなもんじゃねぇんだ。
「俺がホモになってんじゃねぇかよ……!聞いてんのか宮城ぃぃ!こっち向きやがれ!」
アンタがユニフォームに着替える度にアンタの裸にドキドキしてしまっていることに気付いた時の俺の衝撃!
「お前絶対許さねぇ〜!一発殴らせろオラァ」
それをオカズに抜いてしまったあの晩の衝撃!二回も抜いちまってんだよこっちは!もう失うものなんて何もない。今じゃもう認めざるを得ないんだよ。アンタのことが好きなんだって……。
「……って」
どんだけ苦しんだか知ってんのか。あれだけ自分の中で当たり前だと思っていたノーマルの定義が音を立てて崩れていくのを。彩ちゃんを諦めるのも容易なことじゃなかったんだぞ……
俺は…俺は……なんでホモになんかなっちまったんだろうって……
「え!お前…な、なに泣いて……」
「……泣かせてくれよ今は」
いやまじで……。ショックだよ。ショック……。俺の苦しみも知らないでアンタは何女の子とメールなんかして喜んでんだよ。ふざけんじゃねぇよ。
俺の肩を掴んできたその手を反射的に掴み返して組み敷いた。
机と床が擦れた音をたてて
椅子は倒れて
アンタは俺の下。
ポタリポタリと三井サンの呆気に取られた間抜けな面に零れ落ちるのは俺の切羽詰まった想いだ。
「…み、宮城……?おい!」
やばい。本格的に泣きそうだこれじゃ。こんなのは予定には無かった。全部俺の想定外だ。三井サンの腕を掴んでる今の状況に少なからず興奮していること。
男を、好きだなんて。
男を、どうにかしたいだなんて。
三井サンをどうにかしたいだなんて……
「どけよこらチビっこ!!」
「どかしてみろよ。チビなんだろ?」
あんたの甘いとこは自分の才能に自惚れてるとこだ。だから挫折することになんだよ甘ちゃんが。
図体デカイからって余裕こいてっから俺みたいなチビにナメられんだよ。
もうアンタのことで涙なんか絶対流してやらない。
「…んっ!!」
初めてのキスの味は俺の涙の味だった。
こんなことになるんならもっと早くにさっさと彼女作ってキスなりセックスなりしとくんだった。
バスケばっかやってて何も見えてなかった。キスぐらい済ませときゃ良かった。
なにが悲しくて。
よりにもよって。
ファーストキスの相手が三井サンなんだよ。
「………お、俺の……ファーストキスが………」
ってアンタもかい……。
最悪な俺と三井サン……。
この先のことなんか今は考えらんねぇよ。
End.
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なんでこんなアホな子達に(涙)
続きはいつか書くかも知れない……。
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