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「宮城!おい猿!チビ!」
「……うるせーよ」
俺は微睡んでたいんだよ今のこの時間を。あんたにはこの芸術が分からねぇだろーけど。
俺の選曲は完璧だな……。すっげぇ最高に合うよこれ。泣けてくる……。夕焼けに染められた教室……哀愁の漂う俺様のこの美しい横顔……。ぶ。美しい横顔て。ぶ。自分でうけるわ。
あーあ!だから引っ張んなって!
「千切れたらどーしてくれんだよ!弁償させるかんな!」
「いいから聞け。俺の話を聞けって言ってんの」
「聞こえてんだよ。さっきから人を猿だのなんだの罵りやがって」
ウォークマンを強制的に奪われて、引っ張られたイヤホンで危うく鼓膜を傷つけられるとこだった。
「だから……宮城」
「はぁ」
うぜぇようぜぇよ。触んな!そんなガタイのいい腕で俺の肩を抱くな。そんな風に顔を近づけんな。耳元で…っ
そんなイヤらしい声で……俺の名前を……
「だからメールの打ち方教えてって」
「……俺に聞く意味は?」
「お前得意だろこーゆうの」
「まぁいいや……で?」
「この後に絵文字入れてーんだけど出ねぇんだ……アレどうやんの?」
とりあえず、腕、どけろよな。腹立つから。筋肉質で重たい腕をほどいて
目の前に差し出された携帯画面を無理やり見せられる。
“メール届いたよ”。誰からのメールだ?これ。差出人は……えり。
「てぇか。女の子は野郎のメールに絵文字あったら引くもんスよ。そんぐらい知っとけよな」
この人、一体どこで女と知り合ったんだよ。よくメアドなんか交換できたな……。そんな面倒なこと一番嫌いそうなのに。
「そーなんか?けどなんか送ってきたメールがえらいキラキラしてるからよ……俺もなんかやった方がいいのかなって……」
「貸せよ」
俺の机に座る無礼者の三井サンから携帯を奪う。簡単に渡してしまうこの人は本当におバカさん。すぐさま送受信履歴を確認。“三井さんとメールできるなんてすっごく嬉しいです(*´ヮ`从)もうメール打つ手が震えちゃいますもん(笑)えっと、三井さんって彼女いませんでしたよね?”
なんっだコレ。完全に三井サンにラブじゃん。俺の携帯持つ手が震えるわ。なんだこれ、なんかすっげぇ胸糞悪い……
「何者?このえりって子」
「え、後輩?」
たぶん今の俺はすげぇ三井サンのこと睨んでる。ちょっと視線を泳がせるこの人の目見たら分かるよ。
「ほー…告られたんスか」
「告られたっつか、メアド書いた紙渡されて」
「なんで律儀にメールしてんの?」
「なんでって……結構可愛かったからよ、つい」
「……で、このメールの内容見てどう思った?」
ズイと三井サンに見せつける。
「すげぇキラキラしてるなって……」
「そこじゃねぇだろーよ。これ明らか三井サンのこと好きだっつってんだよ」
そうだよなぁ…って嬉しそうに困った顔すんの止めてくんない。
俺の貴重な時間裂いてまでこんな不快なもの見せられた俺はどう対処しろっての。
こんな最悪な時だけかよ、アンタが俺に話しかけてくんのは。
ちょっと嬉しかった俺のこの純情、どうしてくれるわけ?
メールなんかしてんなよ。アンタ不器用なんだから1日ももたねぇって。
可愛かったからって………ほんと、一言で済ませられる単純バカだな。
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