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 部活の後、宮城と花道は一年の教室に二人きりでいる。三井と流川を待つために。なんだかんだ仲の良い四人。


「はぁ……」


 おい。またかよ、と花道の隣でミックスジュースをちゅうちゅうと吸っていた宮城が苛立ちの眼差しで隣をちらりと見る。バカのくせに一体何を思い悩んでいるのか知らないが、さっきから数分と待たずに溜め息ばかり吐いている。


「はぁ〜ぁ……」


 語尾にはゴッと鈍い音が。男同士だと遠慮が無くなるもんだから拳で。

「痛ー!?なにすんだリョーちん!」

「辛気臭ぇんだよオメェはよ。さっきからハァハァと」

「………う…すまん」


らしくねぇ。らしくなさすぎるぜ花道。小さく呟いて机に突っ伏してしまった赤毛を見て、片眉を上げる宮城。けどバカが思い悩むことと言ったら、食の事か性の事かどっちかしかない。


「んだよ、どーしちゃったのよ花道くんは。インポにでもなったのかな?」


まぁ二分の一の確率だ。


「あ?ちげーよ蹴り倒すぞリョーちん……」

突っ伏したまんまだった曇った声がやっと届く。宮城は花道の肩を抱きケラケラとやんちゃに笑う。

「んじゃあ何なのよ」

「……あいつ、ぜんぜん動揺しないんだ。なんかすっげぇ腹立ってきて」


 あいつ?と花道の赤毛をくりくりと指に絡めて一人遊びしながら問うと、あいつというのは流川を指し、先日やっとの想いで告白したのにも関わらず流川は動揺もしなければ拒むこともせず、ただ軽く聞き流したらしい。まぁ流川の性格を考えれば妥当な線だろうなと宮城は思ったが、花道の立場になればそれは辛い。


「なぁリョーちん、普通好きだって言われたら少しぐらい動揺するよな?」


「ああそりゃな」


そりゃ男に好きだと告げられたなら普通の感覚なら死の宣告に等しい。けど世の中には普通の定義をぶち壊してしまってる連中もいる。宮城や花道のように。


「ミッチーはどうなんだ?」


「あの人はお前アレだよ。期待を裏切らない人だよ」


もうお互いに事情は知っているから気兼ねが要らない。云わば情報交換?みたいなものだ。正直、宮城は優越感に浸っていた。俺の恋人自慢である。


《ガララ…》


きた!三井サンが来たーと扉の音を聞くなりすがり付く花道をベリッと剥がしてお出迎えする。


「うおわっビビった………あ、コラっお前ぶらさがるな!首!首折れる!」

「三井サーンッ遅かったじゃないスかー!着替えにどんだけ時間かかってんの!?」


すげぇ…と花道はその夫婦のやり取りを呆気に取られ見ている。あの相手に一切の抵抗権利を与えない連続攻撃には目を見張るものがある。三井はされるがまま突っ立って、宮城の手が休まるのを待っている。


「おい桜木!ぼけっとんなとこにいねぇでこの小猿なんとかしてくれ!」

「小猿って俺のこと?ひでぇよ三井サン……」


「泣き真似すんな首絞められたいか」


花道は、いや、見守ってるわ……と窓の外の夕焼けを見つめた。日が暮れてく様はどうしてこんなにも胸を締め付けるんだろうか。ただ太陽が沈んでいくだけのことなのに。ああ、切なくて仕方ない。


(いいよな…両想いの奴らは)



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