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 大好きだから怖くない。
たとえこの夜を切っ掛けに幼なじみの二人が壊れてしまっても、それはそれで構わないのかも知れない。

 私は楓を受け入れるだけだ。

 頭で決意は固まったのに体は緊張を隠せなくて、下着を脱がされてからも脚を開くのを躊躇った。楓は急かすこともなく、無理に開かせることもしない。

「ごめん。初めてだから少し怖い」

 誤解はさせたくなくてそう言った。その時の驚いた顔の楓を見たらなんかちょっと可笑しくて。ボソッと低い声で「わかった……」なんて言うから尚更。

「じゃあ俺も教えといてやる」

「俺もお前が初めて」

 (え?ほんとに?)

「これも初めて買った」

 そう言って頭の下に敷いている枕とシーツの合間に手を突っ込んで見せたのは四角くてビニール製の……。

「もしかしてコンビニ行ったのってこれのため!?(やる気満々だったのか)」
「ん」

 だからどうしたとでも言いたそうだ。たまに楓が分からなくなる……シャイなのかと思えばえらい大胆な行動にでる時もあるし、まだまだ謎多き男。私は喉の奥で声を抑えて笑った。

「それ、着けるんだよね」

 どうやって着けるんだろうって気になる……や、決してマジマジと見たいって訳じゃないんだけど!

 って思いつつも視線は楓の顔から胸板、腹筋にかけて下りていく。綺麗な体してるなぁやっぱり……無駄な脂肪がないし引き締まってて腰もくびれてるし……

「なに、見たいのか?着けるとこ」

 ハッとして私は我に返る。改めて楓の逞しい体つきに見惚れてしまった。視線を一気に戻して大袈裟に首を横に振る。

「い、いいです。見ませんっ」
「俺は別にいいけど(見せてどうなる訳でもないし…)」
「いい……!」

 楓はなんだか私の慌てぶりを面白がってか、見せたそうにして俯く私の顔を覗き込もうとする。ほんと意地悪な男だ。

「なに本気で照れてんだ……」

 そう言って手元を見ながら、早速装着しようとする楓に私は慌てて視線を反らすしかなかった。音だけは聞こえてくるもんだからそれが余計な想像力を掻き立てる。

(照れるに決まってるじゃん……)

 ある状態にならないと着けられないことも分かっているから死ぬ程恥ずかしい。私がわたわたしてる間に装着し終えたらしい楓が、ベッドを軋ませて覆い被さってきた。重い。熱い……。

「痛くしないでね……?」

 半分本気で言った。酷くされるのはやっぱり怖くて。

「ね?」

 念を押したら唇にキスされて。頬にもキスされた。ちゅって音まで聞こえて顔は熱くて熱くて。それだけでキスは止まずに横たえた顎から首筋に沿ってひんやりとして柔らかい感触が這っていく。楓の筋張った手が太股の内側に置かれた時には自然と私の両脚は解かれてしまっていた。


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 楓の指で私の中が慣らされていくうちに、次から次へと何かが内側から溢れてきて濡れていくのが分かる。中に入っているのが指だとしても痛いものは痛かった。恥ずかしさの前に痛みがある。それでも濡れるのは楓にされているからで。あと、やっぱり上手いからだ。ほんとに初めてなのかどうか怪しい……私も楓が初めてで比較する男がいないんだから怪しむのも悪い気がするけれど。

 私が比較できるのは、普段の楓と今の楓だけ。

 胸の突起に絡みつく粘着質な感触の中、私は楓の頭を抱え込むようにして首筋に両腕を回した。

 男女の関係って難しく思うより、案外自然になるようになるものなんだ。こうやって触れ合ってみて分かった気がした。言葉にならなくても触れ合うだけで伝わることの方が多いかも知れない。

 相手が楓だからほんとにそう。楓は口下手だから不安になることも多いけど、触れられた時に感じる安心感は半端なく大きいんだ。

 この根拠のない安心感は小さい頃感じたものに似ている気がする。楓って……ほんと不思議な人。私よりずっと大人っぽいし、子供っぽい時もある。

 抱かれてる間私の頭はなぜかハッキリしていて、そんなことを思っていた。



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あきゅろす。
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