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「なに…すっげ怖い顔して。紅茶イヤだった?こっち飲む?イチゴミルク。飲みかけだけど」


驚愕発言をした当の本人は、いつもと全く変わらない調子で私を迎えにやって来て

途中寄った自販機で私には紅茶を

自分には紙パックのイチゴミルクを買った。


それをストローでちゅうちゅうと吸って。

リョータのチョイスはどこか変わってる気がする。




「リョータの趣味ってほんと変わってる……イチゴミルク好きだったり髪型変だし」

「ひでぇ!最後のは余計じゃね?」


フッて笑うリョータにイチゴミルク。
甘ったるい絵面に胸焼けしそうだよ。


極めつけはリョータの女の趣味。

彩子ならお似合いなのに。

リョータと彩子が並んで歩いたら、きっと違和感ないし誰から見たってお似合いのカップルだと思う。

それに比べて、私とリョータは悲しくなるほど不釣り合い。

幼なじみから彼女に昇格したところで、2人の関係がリアルにどう変わるって言うんだろ。


「なんで私?」

リョータは一瞬「へ?」て顔してストローから口を離した。


「…女の趣味も悪いよ」


真面目に言ったつもりなのに、自虐的発言とかって笑われてはぐらかされた。


ちゃんとした理由も聞けないまま



不安を残したまま



私を乗せた自転車は夜道を走る。



彼女、として
ここに座るのは初めてで


リョータは幼なじみじゃなくて彼氏になった。



本気なんだか冗談なんだか

今はまだ怪しいところだけど、
今はこの幸せを噛み締めるように背中に腕をまわす。


自転車で2人乗りって中学生以来。

あの頃はもっと華奢で、小さい背もさらに小さかったけど


こうして今と比べてみると、リョータもやっぱちゃんと男の子だなと思う。


くすぐったい時間。



くすぐったい時間を共有して、自転車は止まった。



目的の場所って…ここ?
学校じゃない。


暗闇には昼間とは全く違う不気味な校舎がそびえ立っている。

「なんだ、俺ら一番乗りか」


「え…一番乗りって他にも誰か来るの?」


「ああ…うん。ごめん。バスケ部の奴何人かと……」


「彩子も来るんだね」


「うん…」



なんで“ごめん”なんだろ。


「しかもココじゃねーんだ」


「え?」

リョータの話だと、肝試しの舞台になるのは学校じゃなくてトンネルで

メンバーは、リョータが所属するバスケ部の部員3人と、マネージャーの彩子と春子ちゃんプラス先輩の妹さんらしい。

2人きりで肝試しするのかと思ってたのが、一気に8人になってしまった。


しかも彩子が来る。

「聞いてないんだけど……」


「や…何となく言いにくくて。でもメンツ集めたの俺じゃないからさ」


そっちもだけど…。トンネルって何。
何となく想像はつくけど。


でも重要なのはここじゃない。

言いにくいってことは後ろめたいってこと?

リョータの言い回しが引っかかる。


そもそもリョータが付き合ってくれなんて
言うことじたいが信じらんないし。



他に来ると言う6人を待つ間、イヤな沈黙が続いた。


リョータを見ても、何考えてんだか分からない。


他のメンバーが到着して、私とリョータが並んで立つ姿を見ると、皆びっくりしたような顔をしてる。


桜木花道なんかは、ご丁寧に彩子と私を交互に見てくれちゃって……。


ほら、だから言ったのに。
私とリョータじゃ不釣り合いだって。


彩子の顔が見れない。


よせばいいのにリョータは、いつもみたいに彩子に絡む。


「リョータ、夏樹と一緒にペア組むの?」


彩子の視線。

見られない。


彩子は意識してない。

ただ私が勝手に……


「うん。あと報告があるんだけど」


「リョータ!!」


言うつもりなの?!
…どうしよう。
なんで私がこんなに動揺してんの。

でも2人が付き合ってるって皆に、彩子に知れたら

有り得ないって顔されそうで………怖い。


「報告?」


彩子は、大きな声で制止しようとした私に目を大きくさせてる。


「俺と夏樹、付き合うことになったんだ」


言ってしまった。



皆の前で堂々とはっきりと、リョータは言い切ってしまった。


気まずいのは私なんだけど。



「あ、そう?良かったじゃないリョータ。おめでとう夏樹」

嫌みのない、いつも通りの飾らない彩子の笑顔が

逆にリョータの胸を痛めつけたんじゃないかと思う。


こんな時にもそんな心配をしてしまう私…情けない。



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あきゅろす。
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