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無意識な言動がなんか可愛いんだよなぁとか思いながら携帯を閉じて、部屋を出る。


今の私もけっこう気色悪いくらいニヤついてるんだろう。
どうにも抑えられない変な高ぶりと、ドキドキの理由ってひとつしかない。

こんな時間に花道と会うってこと。


夜中に人と会うこと自体が普通ではないのに。

デートらしいこともしたことがないのに夜中に逢い引きなんて、かなりハードな気がする。


目的がなんであろうと…今日のイベントを提案してくれたリョータ先輩には心から感謝したい。



ドアを開け、まず目に入ったのが赤い頭だった。

強烈なシンボルカラー。


「こんばんは、花道。お迎えありがとね?」

「おうっ。お迎えに参った」

そう言って屈託のない笑顔でニカッと笑う。
私も緊張を隠すように笑顔で返す。

家を出たら、夏の夜の乾いた風が露出した肌に触れ

胸が少しだけざわついた。


花道に触れたい。
ふと、そう思った。


「ぬ? あ、行くか」

「うん、行こっか」


待ち合わせの学校まで歩いて行く。
夜道を二人きりで。


半歩前には、花道がなんか上向き気味に歩いてる。

ついていきながら、視線をたどる。

空、見てるの?
ああ星が綺麗。ほんと真っ暗で、街灯がなければもっと綺麗に見えるのにと思う。

「星すごいね」

「すごいな…」


乾いた空気を伝って届く声は
静かだけどはっきりと側にある。

花道の体温を感じたい。
そう思ったら、私の手は花道の手をつかんでた。


「手つないでいいかな」

「つ、つないでるじんゃねぇのかコレは」

「ダメかな」

「い、いいんじゃない、」


暗くてもかすかに照れた表情(かお)が見えた。
声、上擦ってるし。


「花道の手、熱いね」

「そうか…?」

「うん。なんか安心する」


花道が私を見てきたから、私も花道を見上げて、にっこりしてみた。


そしたら花道は恥ずかしそうにして顔を伏せて
何も言わなかった。

待ち合わせの場所には、もうすでに他のメンバーが到着していて

私と花道は皆を待たせる形になってしまった。
徒歩だから、仕方ないけど。


花道も私も、皆の間にも、数秒くらいの沈黙があった。


「お前ら……歩き?」

「てか皆…チャリかよ?!」


やってしまったらしい。
リョータ先輩の目が点になってる。そして花道も。

あと私も。

私と花道は、てっきり学校で肝試しするもんだと思い込んでいたから。
だから待ち合わせ場所が学校なんだと思ってた。


「どーすんだよ?」

暗くてよく分からないけど、三井先輩も来てるみたい。

「しょうがねぇよ…。場所変えるしか」

「そもそもドコでやるつもりだったのリョータ」

「裏山のトンネル…」

これには三井先輩と花道が声を上げた。

「はぁ?!」

「けどチャリじゃなきゃ絶対ぇ行けないから場所変えるしかねぇよ」


緊急会議だ。

私と花道は事情を知らなかったとは言え、少しの非難を浴びた。

けど裏山のトンネルに行くぐらいなら、違う場所の方がいい。


話し合いの結果、学校で肝試しをすることになった。


でも夜間はもちろん校門は閉まってる。どうやって入る気…

私が呆然としていると、男子メンバーたちが次つぎに門の格子に足をかけて、よじ登り始めた。

「ちょっと見回りの警備員がいたら見つかるんじゃないの?!」

当然の心配だ。
女子メンバーは全く乗り気にはなれない。

そして、流川も。

花道なんか結局楽しそうだし…もうすでに門の向こう側に行ってるし。


「流川…あんたはやめとくよね?」
「………」

私の問いかけに少し悩んでいる様子。

「おい早く来いって!!
誰かに見られんぞ!!」

そう急かすのは、こういったイベントが案外好きそうな三井先輩。

この状況で悩んでいても、誰かに見つかって説教食らうか、時間を食うか。

他の女子メンバーも同じことを思ったのか、門の格子に手をかけ、よじ登り始めた。


「ちょ…っ無理っ登れない…っ」

ガチャガチャと格子の揺れる音を響かせるだけで、彩子先輩とえりちゃん以外は悪戦苦闘。要するに運動音痴な私と…晴子ちゃん。



「流川!!ぼけっと突っ立ってないで手伝ってあげなさいよっ」
彩子先輩の言葉に渋々と動く流川。
それを見た花道が、軽々と門を越えて、私の隣にやって来た。


「夏樹には触らせねぇぞキツネ!!」

肩を掴まれた私は石化する。
あまりにも堂々と言うもんだから、呆気にとられて声も出ない………。

「あそ」

息巻いた花道と反して冷ややかな反応を返す流川。
余計に恥ずかしくなる。

「バカじゃない…」

嬉しいし…
花道の腕が私の腕を掴んで離さない。


流川は軽く格子を越えて、彩子先輩に急かされるままに晴子ちゃんの手を引いた。

なんとも不機嫌そうな流川に対して嬉々としてる晴子ちゃん。報われない恋なのかなぁと、二人を見て思う。



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