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桜木編


“着いたらメールくれる?”


花道に宛てたメールを送信してから10分ほど経過した。

返事が返ってくるとしたら、電話で。

花道はメールを返さない。
たぶん文章打てないから返せないんだろうけど。


でもいいんだ直接声が聞けた方がうれしい。

私は花道の顔を思い浮かべながら化粧鏡の向こうを見つめる。

化粧、濃くないよね。

何度めかのチェック。


私と花道は付き合って2ヶ月ほどになる。
いつもぎこちなく接してくる花道に、手慣れた私。


同じ学年なのにいつも敬語で話す花道に苛ついて、こないだ喧嘩したばっかりだけど

今日会えばすぐに仲直りできるって思ってる。


あいつのは、他人行儀的なのではなくて
照れくさいのと不器用だからってことは付き合う前から知ってることだから本気で怒ってなんかいない。

けど


もっと距離を縮めたいのが本音かも知れない。

敬語じゃやっぱり距離を感じるし…。

でもあの花道のことだから
私と話すことがきっと精一杯なんだろうとも思う。



【―肝試し―桜木編】


着信音が鳴り、鏡の向こうでニヤケていた私がぴくりと反応した。

「…もしもし」


「あ、夏樹さん、俺、だけど」

「“さん”いらないってばっ」

「あ、すまん…」

「着いた?」

「おうっ 今、家の前にいるから」

「分かった。ちょっと待っててね」

「ん」

「切るね?」

「ん? うん」


うんってもう。可愛いし。バカ花道。



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あきゅろす。
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