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目ぇ開けてんのか閉じてんのかも区別がつかない暗闇の中、ぼんやりと辺りが照らしだされる。


続いて俺もスイッチを入れた。
各自で持参した懐中電灯が、それぞれの位置を知らせ

その光の線が、各々の足元を照らして道を作りだす。



「皆ちゃんといる?!」


「はいはーい!!
宮城リョータいます!!」


「三井絵梨いまーすっ と、その兄!」


「あ、赤木晴子、ココですっ!」


「そして俺はここにいる!!」



…桜木。

俺は優子の手を引いて、ゆっくりと光の集まる輪の中に入っていった。


「誰だお前。」


「ぬ? 流川 !!
誰って天才、桜木だ!」


俺が前方をライトで照らすと、桜木の憤怒した顔がアップになって近づいてくる。…アホ面だな。
赤い頭がライトの効果でピンク色に見える。幽霊もコイツと対面したら逃げ出すんじゃねぇか、と思う。


「ああ…こんなアホ面はお前しかいねぇ」


「なに?!」


その後、いつも通りに食ってかかってきた桜木の相手を適当にしてから、優子の手を引いて俺の前に立たせた。




「ああ良かった…優子もちゃんと流川と一緒にいるわね?」


「…うん、います」


なに遠慮がちに俯いてんだ…。
俺は思いつきで優子の頭の旋毛(つむじ)をライトで照らす。


「ちょっ…上からライト当てないで!!」

「ビビってんだろう」


「………」


図星、だな。


面白いぐらいに怖がっている優子を見ていたら、珍しく俺に
悪戯心というものが芽生えた。

「………あ」


「え……?」


俺は桜木たちのいる方とは真逆の暗闇をライトで照らした。
もちろんそこに何かイルわけでもねぇ。

ただ一点を見つめて黙る俺を、不安そうに見上げてくる様子が面白い。


「……なんなのよ」

優子が、俺の視線の先を気にしてる間に
背後からそっと肩を叩く。

で、何事もなかったかのようにその手を下ろした。


「今…私の肩叩いた?」


「…?、叩いてない」

その次の瞬間、薄明かりの下で優子の顔が引きつったのが見えた。

……単純。


「ちょっと!!
やだやだ帰る!!」


予想を遙かに上回ったその叫び声には、俺が一番面食らった…

俺は反射的に優子の手を放してから、ふたをするように口を覆うしかない。


「んーっ」


「ちょっと優子!どうしたの?!」

チィ…。
懐中電灯のライトは一斉に俺たちに浴びせられる。


「なんだ?」

「あー流川!
なに優子さんの口押さえてんだ!!
まさか………変態!!」



「るせぇー…どあほう。」


俺の女なんだから
問題ないだろう。
お前に変態と言われる筋合いは毛頭ねぇ。


「ちょっと楓!!苦しい〜って」

俺の腕から逃れた優子が、これまた面白いほどに悔しがっている。

悔しいのは分かるが、単純すぎるお前もお前。


「あんま声だすと集まってくるぜ」


「何が」


「ユーレイ」



…………。

おお、また固まった。怒ったり悔しがったり大変だな。


石化が解けた優子の鋭い視線を背に受けながら、俺は満足げに輪の中へと戻っていった。



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あきゅろす。
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