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▼流川side
…本気で幽霊ごときに怖がってんのか…?
しがみついてくる感触に、いつもの溜息がひとつ洩れる。
迷信とは言ったが幽霊がいないとは俺も思わない。
どうゆうわけか俺には少ないながらも霊感っつーモンがあるらしいから。
デルときはデルだろ。
そんときゃしょーがねぇ。
「ストップストーップ!!」
足場の悪い、ガタガタな小道を脇に反れたところで誰かが声を上げた…が、一瞬のことで誰かは分からなかった。
前方を目を凝らして見ても、こう暗くちゃ薄っすらとしか見えない。
つまりは、自転車のライトが消えたら……真っ暗になるだろう。
そうなったら優子は…いや女共はギャアギャア喚くに違いない。
「優子、懐中電灯出しとけ」
「え?あ…うん。 ねぇ着いたの?」
「知らねぇ」
とりあえずは、ブレーキをかけてその場に留まる。
「……ここか?リョーちん」
「間違いねぇ。この立ち入り禁止の看板が目印なんだ」
立ち入り禁止…?
優子が俺から離れるのを背に感じながら、俺も自転車を降りる。
立ち入り禁止っつうことは、入るなってことだろう。
……入るんだろうけど。
また小さく溜息を吐いてから、その辺の木に自転車を寄せて止めた。
一部の空間から時折強風が吹いてくる。
今歩いてんのは、この柔らかい感触からして茂みなんだろうが…
いったいここはどこなんだ。案の定
皆が自転車を止めたあとにやってきた暗闇が、前方の視界を完全に塞いだ。
「うわ…まじ見えねぇ…」
三井先輩らしい声のあと、予想してた通りに女共が騒ぎ出した。
「……楓…手つないでて…」
俺のすぐ側で優子の情けなく小さな声がして、
後方で俺の服を引っ張る感触がある。
俺は左手をうしろへと伸ばして、優子の手を探った。
「懐中電灯、俺が持ってる」
俺よりも一回りほど小さな手を握ってから、もう片方の空いた手も差し出した。
俺が、優子から受け取った懐中電灯のスイッチを入れるより早く
誰かが周りを照らし出す。
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