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あれ、みんな自転車なんだ?

今から行くとこって遠いのかなぁ


皆が私と流川に「遅い」だとか「遅刻厳禁」だとか口々に言っている。


けど、どこか皆いつもと雰囲気が違って見えて、やっぱり楽しそうだ。


ワクワクしてるのは私だけじゃないよね?


三井さんの後ろには妹の絵梨ちゃんが乗っていて、誰よりも楽しそうにはしゃいでいる。

ふは、三井さん大変そうだな。思わず笑いそうになってしまう。


花道は晴子ちゃんを後方に乗せている。ほんと嬉しそう…晴子ちゃんもなんか照れてる?


あ、やっぱり宮城先輩は彩ちゃんと一緒か。先輩の嬉しそうな顔ったらない。
しかも皆やけに気合いの入った格好してない?!

絵梨ちゃんなんか、ふりふりのキャミソールなんか着てしまってる。

コラコラ太ももチラチラ見えてますけど!!


…と、無意識のうちに楓の方へ目をやった。


あ、見てない。よかった…。



……なに空なんか見上げて……。

私も楓の視線をたどったら、そこには
吸い込まれそうなほどに真っ暗な空が、私たちを飲み込む勢いで広がっていた。


キラキラと星の柔らかな光が瞬いていて


私の腕のなかには楓がいる。


すっごくイイ香りがするんだけど…楓は香水つけたりするのかな?


私はそんなことを思いながら、楓の背中に引っ付いたまま目を閉じた。


楓の背中…すごくあったかい…




「皆そろったし、そろそろ行く?」


「行こ行こ、しっかり掴まっててね彩ちゃん!!」


目を閉じたままでも皆の様子がよく分かる。私は楓に体ぜんぶをゆだねて、ただ目を閉じてるだけ…
こんな幸せな時間ってそうはないよ。





だから今日は、楓にいっぱい触れていたい。


一番に花道と晴子ちゃんのペアが、猛スピードで走り出した。

晴子ちゃんは花道の乱暴な運転にキャアキャア言って必死にしがみついちゃってる。


その後を追うようにして宮城先輩と彩ちゃんのペアが出発して、


その後から三井家兄妹のペアが付いていく。



「ねぇ楓、私たち一番うしろ?」


なんとなく聞いてみたら、少し間を置いて返事がかえってくる。


「ゆっくり行きてぇし」


ゆっくり…か。
なんか以心伝心みたいで嬉しい。


私もちょうどそう思ってたんだよね。




前方で和気あいあいと、軽くレースを繰り広げる皆の後を


楓はマイペースに付いていってる。



「幽霊ってほんとに出るのかな…?」



「…んなもん迷信に決まってるだろ」



やっぱね…楓はそう言うと思ってたけどさ…
でもなんか本格的じゃない?!


こんなとこまで来ちゃって…


どれだけ走ってきたのか、楓の運転に任せっきりでのんびりくつろいでいた私には分からないけど…


夏だと言うのに、この辺りに入ってから急に涼しくなった気がするのは…なぜでしょうか?


空だけは相変わらず澄んでいて、星が綺麗だけれど。


夜空の下を、軽快に疾走する4台の自転車は

まったく私の知らない場所を走っている。

ここは一体どこ?!


車道から離れて、
いよいよ灯りも街並みも見えなくなってきた…。



「どこまで行く気だ……」



私が挙動不審になっていると、楓がボソッと呟いたのが聞こえた。


だよね…いったいどこまで行く気なんだろう…


私たちよりだいぶ前の方で、花道と宮城先輩の楽しそうな笑い声が聞こえてる。

てゆうか…さっきからずっと皆あの調子なんだけど…


あんたら怖くないのか?!



不安だ…………。


私は一層強く楓のトレーナーを握りしめてくっついた。

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