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意地もプライドも捨てて、ここへ戻ってきたけれど
俺は器用じゃないから頭を下げるなんて真似は出来なかった。本当はこんなに簡単に戻っていい場所じゃないのかも知れない。でも俺は自分のプレイで認めてもらうしかないと思ったし、そういう分かりやすいのが一番性にあってると思ったから。

5月19日
インターハイ県予選

この日まで俺は、今までになかったほどに死に物狂いで練習した。朝起きてから夜眠るまで
休みなしで時間の許す限りボールに触り、シュートを打ってきた。感覚を取り戻すために。それでも2年間のブランクはでかかった。バスケから離れていた期間も、ボールに触れなかったわけじゃない。けど一週間やそこら必死に練習した程度で埋まるような生易しいものじゃなかった。
一人になるとき
俺は自分を怒鳴り付けた。
この苛立ちを治める術を知らなかったから…。
眠れない日もあった。そんな日は疲れ果てて意識が遠退くほどに走り込んだ。

努力なんて言葉
俺は嫌いだったし
自分の才能を信じてきたから
俺には二度目の挫折だった。


一回戦
対三浦台
完全に感覚を取り戻すことが出来ないまま、この日に挑んだ。
序盤は三浦台に押され、点差が開く。
俺は今までになかったプレッシャーを感じていた。もし勝てなかったら。そんな“もし”を試合中に考えたこともなかった。自分を信じてきたから。
でも今はそうじゃない。
俺は自分を信じられずにいた。
もし負けたら、それは俺のせいだ。
赤木も木暮も宮城も
今までに培ってきた時間がある。半端にやってきてしまった俺とは比べ物にならない量の練習を重ねてきたんだ。
ここで負けたら…そう考えてしまうと情けない話
怖い、と思った。

情けない。あんな醜態を晒してバスケ部に戻ってきて今さら怖いだなんて。
きっと夏樹もこんな俺だから愛想尽かしたんだろう。そう思えば妙に納得がいった。



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あきゅろす。
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