[携帯モード] [URL送信]



ああ春だなぁ…
桜がこんな咲いてて

今日から高校生活が始まる。


うっし今日も気合い入れてリーゼント作らねば!!

意気込んで洗面台の鏡の前に立つ俺。


「……………」


「はがぁぁあ?!!!」


「流川?!」
…って誰だよ。
思わず口に出した名前に目がさらに丸くなる。

というより目の前のこのキツネ目の男は一体誰なんだぁ!!!

俺は鏡にへばりついてまじまじと目の前の男を見た。


これ…俺なのか?!

鏡のなかの男も面食らった顔をして鏡にへばりついている。


右手をあげると向こうも右手をあげる。


駄目だ……俺の頭はまだ寝てるらしい。

鏡に思い切り頭突きをかましてみたが、痛いだけでこの異常な状況は変わらなかった。

おかげで完全に目は覚めたけど。



俺は洗面台を前にして、ひざを抱えて小さくうずくまり考えた。


何がどうしてこんなことに?
漫画の世界じゃあるまいし。
何よりあと数分もすれば学校に行かなければならない。


どーすんだよ…!


考えても仕方ない。
もう一度鏡と向かい合った。

なんだこのムカツク顔は。
整った顔は。俺の面影は全く消え失せてる…
けど目元はどことなく俺っぽい。

俺ってこんなキツネ目…


ぶんぶんと頭を左右にふり、洗面所を後にした。



家の者に気付かれぬようそっと家を出て学校へ向かう。


髪がいつもより風になびく
道行く女性が俺をチラチラと見る

…どうしようどうしよう
こいつは俺じゃねぇ…!!

いや俺だけどっ


「ぬぁー!!どうなってんだぁー!!」

思わず頭をガシガシと掻いて叫んでしまう。


「流川くん…?」



その声は…!!

「は、春子さん!!」

思いっきり振り替えって
…ってあれ
なんで俺春子さんって…

「えっ?…あ流川…くん、おはよう…
叫んでたけど…その、大丈夫…?」


俺は耳まで完全に赤くなった。なんつー醜態を…っ
そんで俺が流川という男であることは間違いないらしい。


「だ、大丈夫ッス!!いやホント…はは…は…」


春子さんまでもが真っ赤になってる。なぜだ?
そうか俺は今流川……

流川?

「だから誰なんだよ流川って…っ!」

俺は再び眉を寄せて小さく叫んだ。

「どうしたの…?今日の流川くんなんだか変…」

まずい。
ともかく状況はどうであれ、他人の目には俺は流川に写ってるんであって……

流川らしく振る舞わなければ、ややこしくなりそうだ。
俺は流川という男の仕草や言動を頭ひねって思い出した。

あいつならこんな時……


「…な、なんでもねぇ。」
「そう…?でもやっぱりなんか…」
「変じゃな…ねぇよ」


ああ春子さんごめんなさい!!
こんな冷たくしてしまって……
ああツラい…ツラすぎる…っ
流川めぇ…許さん。絶対に許さん。








流川め…絶対に許さん!!!


「寝ぼけんな、ドアホウ。」


脇腹あたりに走った鈍い痛みと共に目が覚めた。


「へ…?夢?」

流川は心底呆れたような顔をして視界から消えた。

「桜木くんおはよう」

再び目の前に現れたのは春子さんだった。どうやら俺は夢を見ていたらしい。あれ、どんな夢を見ていたんだっけ…

晴子さんの春の陽射しのように暖かな笑顔を目の当たりにして、なんか全部忘れてしまった。

「誕生日おめでとう!!」


ああ、今日は俺の…


「ありがとう…ス」


待ちに待った春がやってきた。


end.


1/1ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!