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「夏樹、おい夏樹……大丈夫か……」
「大丈夫……じゃない、かも……」

 どれぐらい時間が経ったのか分からないけど、膣内が酷く痛むのだけは嫌というぐらいに分かる。中に入るものがあんなに大きいとは思わなかったし、あんな動きをするもんだとも思わなかったし。文字通り腰が砕けた……。気持ちいい、と思えたのは楓の超レアな優しい声と身体への愛撫(要するに前戯)であって挿入している間はどう贔屓目に考えても気持ちいいと思えるものではなかった。

 初めはこんなものかな……?

 私は脱力したまま体を丸くした。楓は掛け布団の外で、私に大きな背中を向けて何かしていたけど(何をしてたんだか知らないけれど)、それも終わったのか私の体に密着するようにして入ってきた。楓と向き合いたくて、ゴロンと向きをかえる私。胸板に触れると楓の肌は汗でしっとりと濡れていた。

 色っぽいなぁ……男のくせに。

 私は嫉妬混じりの目でじっと見た。掛け布団の中は熱帯雨林のように熱い。お互いに吐く息も熱い。終わってみると不思議なもので、羞恥心というものが薄らいでいることに気付く。やっぱり肌と肌を合わせると変わるものなんだな、と思う。楓も私の腰に腕を回したりなんかしてきて、いつもとやっぱりどこか違っている。

 もうちゃんと恋人同士になれたかな。

 そんな想いがぼんやりと浮かぶ。

「まだ痛ぇの」
「ん?んー…ちょっとね……?」
「すまん。優しく出来たか自信ない」

 楓……。バカ。優しかったよ……。私の胸はまた大きく高鳴って楓の言動の一つ一つにときめいてしまうのだった。楓にならたぶんどんな酷いことされても受け止められる自信あるわ。大好きな人だから。たぶん、愛してるって今のこの感情を言うんだと思う。この人以外にこんな感情は生まれないこの先絶対。

 楓は私の丸まった体をやんわりと抱き締めた。抱き締めて、「もうこれからはあんま苛めないようにする」って小さい声で言った。

「うん……」

 楓の腕の中でゆったりとした時間が流れはじめて、部屋の中も外もシンと静まり返っていることに気付く。布団の中では自分のものか、楓のものか、規則正しい呼吸の音だけが耳に届く。体が重い。楓の腕は力なく私の体に乗せられたままだ。私は腕の中でもぞもぞと動き、掛け布団の外に顔を出して首をひねると、ベッドサイドにある時計に目を遣った。

 もう真夜中だ。

 朝になったら楓と一緒に初詣に行こう。御願い事はもう決まってる。

 私は目が冴えて眠れそうになかった。このまま初日の出を待とう。楓は一旦寝たらなかなか起きてはくれないから、一人で……。叩き起こしてやろうかな。なんて、そっと楓の方を見る。

 やっぱりもう寝ちゃってる。

 私は楓が愛しくて、寝顔に優しく微笑んだ。

「おやすみ楓。それから誕生日おめでとう」



 そう言ってから楓の隣に寄り添うようにして私も肩を並べる。腕枕して欲しかったのに寝てしまったから自分で楓の腕を伸ばしてそこに頭を置いてやった。楓は腕の痺れで目を覚ますかも知れない。そしたら一緒に初日の出見れるよね。


 私はにこにこしながら夜が明けるのを待った。







End.

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