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『!!!!
ど、どうしよう見られてる…』
慌てて視線を外そうにも見つめたその顔があまりにカッコよくて私はあろうことか見入ってしまった。
ツンツン立った髪の毛に凛々しい眉、ちょっとキツい目…誰が見てもその姿は見惚れるぐらいカッコ良かった。
ずっと俯いてたから気づかなかったけど……。
「??」
『あ!!!!』
見つめていた目の前の顔が怪訝な表情に変わって、私はようやく視線を落とした。
私の顔からは火が吹き出しそうなぐらいに真っ赤に蒸気していた。
『へ、平常心平常心平常心…』
必死に文字を追いながらも心拍数は急上昇していく。
頭がくらくらする…体調が悪い上にこの混雑じゃ空気も薄くなる。
そしてなによりこの2人の男子の存在感が私を圧迫していた。
『早くここから抜け出したい…っ』
酸素が薄い。こんなギュウギュウのすし詰め状態が長く続けば立っていられないかも知れない…。
どうしよう…苦しい…
私は冷や汗を垂らしながらも必死に手すりに掴まっていた。
「…大丈夫?」
俯いたまま縮こまっていると、隣の小柄な方の男子が声をかけてきた。
こ、怖い…っ
「えっ…」
「顔青いけど大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫…」
「ほんと?無理しないで辛かったら
もたれかかってイイヨ」
「………」
え、何この人…顔に似合わず優しい。
「い、いいです!!
大丈夫…だから」
「そう?」
私は顔だけじゃなくて全身が真っ赤になるぐらいに蒸気した。こんな顔見られたくないのに…恥ずかしすぎて倒れるかも。至上最悪最低の日だ。
目の前にいるのがこの人たちじゃなかったら…ここまで恥ずかしくないのに…。
なんでだろ…まともに顔が上げられない。
『お願いだから話しかけないでぇ〜…っ;;』
隣の彼は再び前に向き直ると背の高い彼と話し始めた。
「やっさしいじゃんオマエ」
背の高い方の男子がニヤニヤ笑いながらからかっている。
「そりゃ女の子に優しくすんのは俺のポリシーだし?」
「…ポリシーってなんだ?」
『ああもう聞こえない聞こえない聞きたくない!!早く着いて〜っ』
そうこうしてる内に次の駅に停車したらしく、慌ただしく車内の人たちが入り口の方へと移動してきた。
この時ほど苦しいものはない。
『押しつぶされるっ』
私は前から集まってくるサラリーマン風の男に押しやられ、バランスを崩しかけた。
「きゃ…!!」
「うぉっ」
『め、眼鏡が割れちゃう…っ』
私は目の前の体に寄りかかる形で支えられ、なんとか車内に留まれたものの、尚も押し合いへし合いされる中で、目の前の体に上半身の体重を預けていた。
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