[1]
キーンコーン
カーンコーン
今日の授業を終わらせるチャイムが鳴り響く。
「夏樹!
もうそろそろアノ子来る頃じゃない?」
ニヤニヤと嬉しそうな顔で私を覗き込む彼女は友達のゆかり。
「なにニヤニヤしてんのよ〜」
「だってアノ子可愛いじゃん。なんか子犬みたいで♪」
子犬ねぇ……まぁ確かに可愛い年下の彼氏なんだけどね。
私もつられて顔が緩む。
「夏樹ちゃん!」
「あ、来た」
噂をすれば何とかってやつ。
勢いよく開かれた扉の方を見ると息を切らしたリョータが眩しい笑顔で待っていた。
「ここ3年の教室なんだけどぉ?」
ゆかりが悪戯な笑みでリョータに詰め寄る。
「ゆかりさんチワッス。だって今日夏樹ちゃんとデートの約束してんだもん…きちゃった」
これじゃまるで本当に尻尾を振る犬みたい。
「ちょ、リョータ!恥ずかしいから迎えに来なくていいっつってんじゃん!」
私の頬はほんのりと染まる。
「いいじゃんいいじゃん♪ほら夏樹。行ってらっしゃーい♪」
私はゆかりにサッサと教室から出されてしまった。
振り返ればニンマリ笑って手をふるゆかりの姿。
「じゃ、行こっか♪」
も〜…その笑顔は反則だってば…
結局私はリョータのこんな風に素直なところが好きだったりする。
今日のデートは私が決める日。
こないだはリョータが観たがってた映画を観に行ったから。
「で、今日はどうすんの?」
そう言ってリョータがさり気なく私の手を握ってくる。
私もリョータの指に絡ませて手を繋ぐ。
これがいつもの私たち。
「んとね〜今日はちょっと買い物に付き合ってもらおうかな」
「何買うの?」
「な〜いしょっ」
私はもったいぶってニッコリして見せる。
私たちは学生服のまま、賑やかな若者の集う街へと繰り出した。
私の隣にはリョータ。
この感覚が最近では当たり前のようになっている。
リョータと一緒じゃない日のほうが珍しいくらいじゃないかな…
いっつもリョータが私に会いに来てくれるから、私がリョータを探すことなんて滅多にないんだよね。
私、ちゃんと愛されてるよね。
チラッと隣を見る。
隣で見るリョータの顔がすき。
黙ってればクールで男前なのに…
「ん?なに夏樹ちゃん。さっきから俺の顔ばっか見て。……カッコよすぎて惚れ直した?」
「バカ」
これだもん。
でも本当にカッコいいんだから言い返せない。
「あ、ここだよココ♪」
私たちは目的の店へとやって来た。
そこは可愛らしいランジェリーのお店。
ピンクのランプに真っ白のフリルが飾られている。店内には若い女性が、所狭しと並べられたランジェリーを楽しそうに品定めしている。
「ちょ、ここって…」
「新しい下着買いたいんだよね。だからリョータに選んでもらおうと思って♪」
「ええ?!」
思った通りの反応が返ってきて私は上機嫌になる。
下着を見たかったのもあるけど、わざわざリョータを連れてきたのは、彼のこんな反応を楽しむためでもあるから。
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