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ふわぁと立ちこめる湯気の中に
みっちゃんの背中が現れた。


…おさまれ心臓!!
うるさいぞっ


さっきからドンドン鳴ってる。裸なんて見るのは初めてだし、お互いに…。


みっちゃんは私に背を向けたまま、じっとしてる。


…にしても、大きい…背中
こんな大きかったっけ?間近で見せられるとやっぱり圧倒しちゃうな。

この背中、私のだよね。
誰にも渡したくない。


「あー俺先湯船つかってるから…」


「うん?」


ああ目ぇ瞑れってわけね…。私だってマジマジ見るほどバカじゃない!!


「いいよ」



ポチャン…


「じゃ、どうぞ」


どうぞって…
洗いますよ…バカ。チラッと湯船の方を見たら思っきし壁の方を見据えたみっちゃんが。


「っぷ。」


「あ?!」

思っきし振り返ったみっちゃんとご対面。


「ぬぁっ!!ごめん!!スマンっ…見るつもりじゃ」


「ちょ、たんま。見てもいいから。私ら付き合ってるんだよね?」


あからさまに両手で目を隠してるみっちゃんに苛立って、その両手をはがしにかかる私。

そう。恋人同士でしょ?もっと触れ合いを大事にしよーよ…今日は逃げんなよ三井寿!!


完全に目と目が合った。…でもみっちゃんの視線がすぐに私の胸元に落とされた。

「ね、私も入っていい…?」


みっちゃんの両手を掴んだままの私。
固まるみっちゃん。


「……ど、うぞ…」

みっちゃんの頭に手をついて
ゆっくり湯船に足から入る私。
そんな一連の動作を目で追うみっちゃん。見るとこは見るんですね?ん?


「あったかぁ〜…生き返った〜…」


みっちゃんと向かい合わせに体育座り。
みっちゃんは照れくさそうに長い足を縮こまらせてる。見てる私が窮屈になるんだけど…

「体ちゃんとあっためとけ」

そう言ってパシャっと掬ったお湯を私にかけた。


「…うん。
ねぇなんか流石に窮屈だね」

私はフフって笑って首までお湯に沈んだ。



「そりゃあお前まで入ったら狭くなるだろ。俺サマの長い足が伸ばせねーし?」


足をチャポンと上げてからこの…どーだ参ったかと言わんばかりの勝ち誇ったような顔!


「ふーん。じゃあこれで伸ばせますか?寿サマ」


私はみっちゃんの足を持つと伸ばさせて、その上に座った。

…照れる。流石に照れる。なにしろ…みっちゃんの体とここまで密接にくっつくことが初めてだから…。で、当たってる、し。


「優子……っ」


「は、はい」


みっちゃんの眼差しが熱い。でもって体も熱い。…今ここで一つになっても私は構わない。あとは男のなかの男、三井寿がなんとかしてくれるだろう。


好きにしていいよ。

あ…顔が近づいてきた…キス…するのかな。
ここは目を瞑ろうか…


チュッと軽く唇が触れた。みっちゃんからのキス。やっぱりこの密接な雰囲気に呑まれましたか?そうじゃなきゃ…みっちゃん、アナタ男じゃないよ…?


で、唇が離れたあと、また見つめ合った。で、頬染めた三井寿は……目をそらした。






………終わり?!
終わりですか?!



「はぁ……あ、熱いなしかし……そろそろ……」


「みっちゃん!!!」


もう我慢ならない。
女の子にここまで積極的に迫らせといて…!!
ヘタレにも程があるってもんだよみっちゃん!!


私はみっちゃんの肩を掴んで馬乗りになって睨みつけた。


「ん……?」



「あんた私の裸見てなんとも思わないの?!キスだけ?!…ゴホッゴホ」


勢いよく喋ったから咳込んじゃったよバカ。



「あのな……平常心でいられねーに決まってんだろ」


お湯から出た私の上身を沈めさせながら、心底呆れたように眉を寄せて静かに言うみっちゃん。


「風邪ひいてんだから大人しく浸かってろって…頼むから…」


小さな子をあやすように優しく背中をさする手。

………む。


「じゃあ湯冷めしないように今日はずっと…みっちゃんが暖めてよ?」


「へいへい」


長い指先が私の髪をくしゃっと撫でる。

その後は湯船に浸かったまま、ずっと私を抱っこしていてくれた。時折クシャミをすると、お湯を足してくれたり、体をさすってくれたり…。

なんだかんだで優しいからついつい甘えてしまう私。



そんなみっちゃんの愛情のおかげで私はホッコリ体の芯まで暖まったのだった。

そしてお風呂から上がる頃には羞恥心というものは薄れてて、ベッタリだった。主に私が。



さあこれから部屋に戻って更に暖めてもらっちゃいます(にっこり)




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