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「よし。お前はテンだ」

テンテン模様だから。我ながら完璧なネーミングだな。

名前が決まったら後は里親探しだ。


俺は以前にも拾った猫を里親に出した経験があったから
こーゆう時の対処方は心得ていた。


まず里親になりたいって奴らが投稿するスペースがある。
それは新聞の求人欄だったり雑誌の片隅だったり。

俺は近辺で探してみることにした。


「んー…お。××町か。ちと遠いな…」

めぼしいのを見つけたが、投稿者の詳細を見ると“32歳、男性”とある。


「…なんっか渡したくねぇ…」

こう言ったら大げさかも知らんが、娘を嫁に出す父親の気持ちに近いもんがある。


「ダメだ。次」


“〇△町、25歳、女性”


「お?近い」


さらに先を読み進めてみる。


“以前飼っていた猫が老衰で亡くなり、また新たな家族が欲しいと思い里親になろうと投稿致しました。現在は一人暮らしで……略”


「これだ!!!」


ここは俺のカンを頼ろう。だてに猫好きやってるわけじゃない。良い飼い主は感覚で分かる!

俺はそうと決めたら早速記載された電話番号にかけてみることにした。


「携帯か…なら本人が出るな」


名前は“岡島優子”


携帯を片手に番号を入力する。

電話をかけるとしばらくして若い女が出た。
事の経緯を説明すると、里親になることを快く承諾してくれた。やっぱり俺のカンに狂いはなかった。

早速、今日の晩に近くの公園で手渡すことになった。

割と近い距離に住んでいた為、トントン拍子に話は進んだ。


「よかったな。お前の飼い主見つかったぞ」


俺は微笑んで言うとテンをなでた。

テンは知ってかしらずか俺の手にすり寄ってくる。


俺もメシ食って支度するか。





─PM 9:50─

約束の時間の10分前に俺は子猫と猫の缶詰め等を持って家を出た。
お袋には、こんな時間にどこ行くのかと問われたが、コンビニに行くっつって出てきた。


「んじゃ行くか」


テンに一声かけると、待ち合わせ場所である公園へと向かった。


夜道を歩く。
少し肌寒い。もうすっかり雨は上がり、空を仰げば星が煌めいている。


そして到着した…が、それらしい人物は見当たらない。

...待つか。

俺は公園の中を見渡してから歩き出した。


ブランコとか懐かしいな。
俺はそこに腰掛けた。


キィっと軽く漕いでみる。



「ミャー」


「ん、もう来るだろ…」


っかしーな
もう来てもいい頃だと思うけど

俺は辺りを見渡す。
人がまずいない。
犬の散歩するじーさんが通りかかるぐらいだ。


…と入り口の方から誰かが来るのが見えた。


あれかな?


影からでもそれが女だと分かった。
どうやら里親が来たらしい。


しかし街灯に照らしだされた女を見て俺は口を開けた。

茶髪の巻き髪に露出度の高い服…どっから見てもギャル系の格好だ。

あの丁寧な対応とえらくギャップのある本人の登場に、面食らう俺。


「あの…三井さんですか?」


お、可愛い!!
つうかめちゃくちゃ美人じゃねぇか…!!

俺は不覚にも舞い上がった。


「み、三井です」


「ふふ、こんばんわ。初めまして、先ほど連絡を頂いた岡島優子です」


おお!!
礼儀正しい。
うちの妹とじゃ月と……何だっけか。
月となんとかだ。


「初めまして。夜分に電話してしまってスンマセ…、すみません」


俺は慣れない言葉で軽く頭を下げた。



「いいえ、私もさっき仕事が終わったので」


女はそう言って微笑んだ。
…可愛い。


「ミャー」


おっと危うく忘れるとこだったぜ。子猫が鳴いたことで本来の目的を思い出した。

俺は上着のなかから子猫を出す。


「わっ 可愛い♪
小さいね〜♪」


「一応テンって名前付けたんですけど…」


女が手を差し出してきたから俺は子猫を手渡した。


「テンちゃん?
テンくん?」


「ちゃん」



「テンちゃんかぁ♪
おとなしいけどイイ子だね」


女は目をキラキラさせて子猫に夢中だ。

俺はひとまず胸をなで下ろした。


「可愛がってもらえますか?」



女は俺を見ると
「もちろん!!」と言ってまた笑った。



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あきゅろす。
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