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痛いぐらいに熱いシャワーを浴びながら、子猫のことを考えていた。
なんか捨て猫ってほっとけねーんだよな…。
毎回拾って来ては怒られて里親に出してきた。


それに俺はもともと猫が好きだからな。
自由奔放で人間に媚びないとこがいい。


「お兄ちゃん?」


…んあ、絵梨?


「ちょっと何このビショ濡れの制服!!
こんなのと私の服一緒にしないでよ!!」


「あ?
どーせ洗うんだからいいじゃねぇか」

こんなのって…
人のモンをばい菌かなんかみたいに言いやがって!!


「ご飯できてるんだから早く上がってよね!?」


「わぁったからどっか行けチビ!!!」


「チビって言うなクソ兄!!」


罵声浴びせた上に思っきしドア蹴っていきやがった。

凶暴な…誰に似たんだいったい…。


俺はサッサと洗うと風呂から上がった。

着替えて浴室を出たら、絵梨の姿が見えたので呼びとめる。


「お前シャンプー
バカみたいに使うんじゃねぇ。こないだ買い換えたやつがもう半分もねぇぞ!!」

妹が俺に気づいてハッとする。


「う、うるさいな!!
女は髪のケアがだいじなんだからっ」


「外見磨く前に中身を鍛えろ!!」


「……うざ…!!
お父さんみたいなこと言わないでくれる?! ほんと兄貴うざい!!」


か、可愛くね〜!!


女ってみんなこーなのか?!
昔はお兄ちゃんお兄ちゃんっつって甘えてたくせに…

ほんっと憎たらしいガキだぜ…。

妹の成長を喜び願うのが兄としてあるべき姿だとは思うもんの…
ほんと一体誰に似たんだか。


俺は少々苛立ちながらリビングへと向かった。


「寿、あんた置き傘とかしときなさいよ…。そうかあんたに彼女がいたらねぇ…」


あーまたその話題か。
なにかとソッチの話題にもってこーとしやがる…!


俺はドカッと食卓の前へと腰かけた。


「お母さん。お兄ちゃんに彼女ができたら奇跡だよ。こんな性格悪いのに無理だって!」


「そうねぇ…確かに性格に問題ありだけど母親ながら寿は男前だと思うんだけどね?」


「いくら顔良くたって性格悪かったらダメだって!!
女は紳士的な男が好きなんだから。元ヤンなんか問題外!!」

…んのやろ!


「……さっきから黙って聞いてりゃ言いたい放題言ってくれるじゃねぇか絵梨…。俺から言わしてみればお前みたいなガサツな女は問題外だぜ!」



勝った…!と思ってニヤリと笑ってやったが次の瞬間。

ガスッ


「………あだァ!!」


「大っ嫌い!!!」


「お前スネ蹴りやがったな?!
イッテ…ッ」


「ちょっとちょっと喧嘩ばっかしてないで!
じゃ、いただきまーす」



ちぃっ
俺は弟が欲しかったぜ!!


「あー俺
部屋で食うから」


配膳に自分のぶんだけ乗っける。


「なんで?」


「1人でゆっくり食いてぇんだよ俺は」


俺は2人の怪訝な顔に一睨みしてから席を立った。

悠長に自分だけメシ食ってる場合でもない。気がかりはあの子猫だ…。

部屋に戻り、ベッドの毛布をそっとめくると小さな体をさらに小さく丸めた子猫の姿がある。

その小さな体を撫でてやる。


やっぱり冷たい。
相当長い間あの雨のなか放置されてたんだろうな。


「…寒いか?」


…鳴かない。
さっきと比べたら格段に弱ってきてる。

俺は服を着込めるだけ着込んで、自分の肌で温めてやることにした。

こんだけ着込んでベッドに潜ればだいぶ温かくなるだろ。


「…おいどうした…」


鳴かない。


俺はそれでもニワトリが卵を温めるみたいにして子猫を温め続けた。


メシ食うのも忘れて。


どれぐらい経ったんだろう。
いつの間にか寝ちまってた…。

ゆっくりと目を開けてみると、俺の頬にぴったり寄り添って眠る子猫の顔がアップであった。


俺は思わずニヤける。


可愛い!!!
このくちがたまんねぇっ


俺は子猫に愛情たっぷりのキスをした。
女相手にゃこうはいかないだろう。


はぁもう俺の恋人はお前だよ…
ところでお前は雌?雄?


雄でも猫なら問題ない。猫ならば。


俺はそっと子猫を仰向けさせた。

「お。お前メスか」


全然問題なし。

「ミャー」


眩しそうに俺の手の中でモソモソと動き出す子猫。
どうやら温めた効果はあったみたいだ。


「やっと鳴いたな」

やっぱり人肌が一番効果覿面らしいな。


「お前…名前つけてやらねぇとな」


俺は考える。

オスだったらブチにするつもりだったが、メスにいくらなんでもブチ…はないな。



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