[3]
拾ったはいいけど
どーすんだ…。
持って帰ったら間違いなく嫌な顔されるだろうし、まずお袋が猫アレルギーだ…。飼うことは不可能に近い。
かと言って…
子猫と目が合った。
かと言ってほっとくわけにもいかねぇ…か…。
「お前冷たいな?」
抱いていたら子猫の体温がかなり低いのに気がついた。
これは早く何とかしないとマズそうだ。
俺は考えた末、子猫を胸のなかに入れて、自分の体温で暖めながら帰ることにした。
「…冷てぇ。大丈夫かなコイツ…」
一刻を争うかも知れない状態で、俺は再び走りだした。
結構スピードをだしたおかげで5分も経たないうちに着いた。
一息入れると音もたてずに静かに扉を開ける。
「寿!! あんた何そのカッコ!!」
げ………
「何って…傘忘れたんだよ。」
「ちょっとそのまま入らないで!!
ここで脱いでってちょうだい」
……まずい。
ここで脱いだらバレるじゃねぇか。
…どうする…
その時かすかに響く鳴き声。
「ミャー」
と、同時に俺は叫んでいた。
「あ────!!!!!!」
「な、何??!」
突然の俺の絶叫にお袋が慌てふためいて目を丸くする。
バレ…なかったみたいだな…。
しかし早くこの場を切り抜けねぇと……
「…何でもねぇちょっと思い出しただけだ。それより…息子の着替えずっと見てる気か?」
「はぁ…ったく…着替えたらすぐお風呂入りなさいよ?」
…助かった。
「へいへい」
お袋はバスタオルを俺に手渡すとリビングへと消えた。
俺はさっさと
ずぶ濡れた学ランを脱ぎ捨てると、腹から手を入れてカッターシャツの中から子猫を取り出した。
温めていたつもりだったが大した効果もなかったようで、いまだに冷たいまんまだ。
「どうすっか…。
と、鳴くんじゃねぇぞ?」
小声で窘めると、いったんその場に置いてカッターシャツも脱いで下も脱いだ。
もうこれは服じゃねぇ……雑巾みたいに絞ったらエライことになりそうだ。
そんでもって今のこの姿を妹が見たら“変態”よばわりされるだろう。
あいつ最近キっツいんだよなぁ言い方が!!
俺がちょっと用事で部屋に入っただけで「クソ兄貴早くでてけ」だぜ。クソって何よ?
あんな下品な言葉どこで覚えたんだ。
品のある俺様の妹とは思えない。
ともかく今はコイツだ。
なんとか温めてやらねーと…。
俺はカッターシャツも学ランと一緒に丸めると、子猫を抱き直して部屋へ向かった。
あー俺も風呂入らねーと風邪ひいちまうな!!
寒ぃ…っ
部屋に入るとそれなりに暖かいが、雨の日じゃ気温は軒並み下がる。
まずは暖房を入れ、お袋に手渡されたタオルで子猫を拭いてやることにした。
「ミャー…」
「お、鳴いた。
お前鳴かなくなったから心配したぜ」
自然と笑みがこぼれた。
「ちょっと待ってな。俺風呂入るからな」
そう言って、ベッドの中に子猫を入れてやると着替えを持って足早に部屋を後にした。
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