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ただ千羽鶴を折ると言っても、流川は過去に折り紙を折ったような記憶がない。
幼稚園の頃に折っていたような気もするが、すっかり忘れてしまっていた。

となると、鶴の折り方など知るはずもないわけで…

彩子に千羽鶴の折り方を教わることになった。


やる気になれば、飲み込みが早い。

すぐに鶴の折り方をマスターした。


「じゃあ来週の日曜日にお見舞い行くからそれまでに………」


「千羽折る」


流川に迷いはない。絶対に千羽折る気でいる。

帰宅後、その宣言を守るべく、さっそく彩子から貰った折り紙を取り出すと折り始めた。




ひとつ、ひとつ想いを込めて
黙々と折っていく。


時間と眠気との勝負。
日数から考えたら、ハンパなペースじゃ次のお見舞いの日までには到底間に合わない。


眠気と戦うのは流川にとって相当な苦痛だった。

ただでさえ眠い時間帯だというのに、こんな一人で黙々と一点を見つめていると、どうしても瞼が下がってきてしまう。


眠い…。

グシャッ



「…………」


チィ…。どうやら、うつらうつらしていたら潰してしまったらしい。


今でやっと100羽か。あとこれの10倍作らなきゃなんねぇ。………ねみぃ…


「………」


流川がバスケ以外のことでこんなに時間を割いたのは初めてだろう。

なにやってんだろうかと、ふと分からなくなり手が止まる。なんで俺はこんな時間まで折り紙なんか…と。


それでも流川は折り続けた。


折り続けたが…
やはり2時を過ぎた頃には限界に達し、半ば意識を失うようにして手に鶴を握りしめ、机に突っ伏したまま眠りに落ちた。




「………水無瀬」


!!!

「ねぇちょっと!!
今流川くんが寝言で水無瀬さんのこと呼んだよ?!」


「うそ?!」

「水無瀬さんってバスケ部のマネージャーの?!」


そーっと流川の端正な寝顔をのぞき込む取り巻きの女子たち数名。

そんな女子たちのざわめきにも流川は全く起きる気配がない。

昨日の作業が堪えたらしい。死んだように眠り続けている。


そして額には生々しいキズが…
今朝は無意識のうちに起きて、寝ながら自転車をこいできたらしく、痛々しいキズがあちこちにある。

自転車も恐らくは……破損だろう。



授業中などは、ここまで大胆に寝られたら怒る気も失せるといった感じで先生も放置。




「………」


「あ、起きた…!!」


突然むくっと顔を上げる流川に、取り巻きの女子一同は後ずさりする。


「……部活」


ああ、この流川という男は部活の時間になると完全に目を覚ます。


女子が流川に声をかける間もなく、スクッと立ち上がると教室を出てしまった。



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