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「おい…今日の流川はえらく機嫌悪いな…」


さっきから花道と火花を散らしている。普段なら「どあほう」の一言で片づけられる花道のちょっかいも、今の流川には火に油を注ぐようなもんらしい…。

周りで流川の様子を見ていた部員は、触らぬ神に祟りなしといった風で無関心を決め込んでいる。


「俺に構うな。下手くそ」


「な、にぃい?!」



口論は普段通り平行線…。どっちも折れる気配がない。
そんな二人を見かねた彩子が制止に入る。

もちろんハリセンを所持して、だ。

パンパンッ

予想通りに小気味よい乾いた音が体育館に響く。
流川と花道、平等に一発ずつ。



「アンタたちいい加減にしなさい!!!」


リョータも彩子に賛同するように睨みをきかせてくる。
流川は不服な表情のままで、花道もじだんだ踏んで怒っている。


「いつもシレッとしてる流川までどうしたのよ…最近やけに機嫌悪いじゃない」


「あいつはまだ入院してるんスか?」


「夏樹?」


彩子の大きくパッチリした目がさらに丸くなる。
今の一言で、最近の流川の不機嫌の理由が分かった気がした。
夏樹は1年のマネージャーで流川とは仲が良かった。


心配してたんだ…
それを思うと、どうしても口元が緩んでしまう。しかしそんな彩子の様子で流川の不機嫌さは更に増す。

「ごめんごめんっ
意外で…つい。夏樹ならあと1ヶ月弱で退院みたいよ?こないだお見舞いに行った時にそう言ってたから」


「見舞い?」


「そうよ。お見舞い。また行くけどアンタも来る?」


「行く」


即答だった。


彩子も少々面食らう。だってあの流川がお見舞い…?有り得ない話だ。

けど流川の目は真っ直ぐだった。


こりゃひょっとして…ホンモノかもな。

彩子はニヤリと微笑むと、流川の肩をハリセンでポンポンと軽く叩いた。


「じゃあなんか持ってってあげなさいよ」


「なんかって何をスか?」


「んー…」


彩子が片眉を上げて唸っていると、リョータがひょっこり顔を出した。


「千羽鶴は?」


千羽鶴…
早く治るようにと願を掛けて、折り紙で鶴を千羽折るアレだ。


「ああそれいいわね!
流川から千羽鶴なんか貰ったら、夏樹めちゃくちゃ喜ぶと思うわ」


「だしょ?!
でも流川じゃ無理か…千羽鶴折るなんて地道な作業できねぇよ。俺でもちょっと自信ない」


これには流川が反応する。


「けど彩ちゃんがもし入院したら俺も千羽鶴折るよ!!
千だろうが万だろうが!!」


彩子の気を引くのに忙しいリョータを余所に、流川は静かに決意していた。


千羽鶴折ってみせる、と。

一度決めたら成し遂げるまでやる男。
それが流川だ。



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あきゅろす。
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