[携帯モード] [URL送信]
[10]



「送ってく」
「わぉ!やったね!んじゃお願いしまっす!」


水無瀬の表情には、俺のなんかと違ってちゃんと感情がこもっていて安心する。今何考えてんのか、何を想ってんのか、分かりやすい。



自転車に水無瀬を乗せて家まで送り届ける間の短い時間。

水無瀬から聞いたはなしは。

風香が俺のことを好きになったらしいだとか、まだ小さい子供なのに、それをとても恥ずかしそうに話したんだとか。

水無瀬が言うには、女の子はどんなに小さくても恋する乙女なんだそうだ。


「楓、知ってた?」
「何を」
「自閉症の子って初対面の人には絶対心開かないって」
「知らねぇ」
「楓すごいね。どんな手を使って風香ちゃんのハートをゲッツしたの?」
「知らねぇ…」


お前の方がなつかれてたじゃねぇか。俺は泣かれてた。


それより俺は、水無瀬の甘くむせかえるような甘い匂いだとか、風にヒラヒラなびくスカートだとか、気にしないことで結構いっぱいいっぱいなんだ。


「あと2日、また助けに行こうか?けど風香ちゃんに悪いかなぁ」


「…来れば」


それに深い意味は、ない。







たぶん。











結局残りの二日間、水無瀬は飯を作りに来た。それと風香を風呂に入れるために。


それから部活が終わって家に帰ったら、風香はもう帰った後だった。帰る頃まで風香の面倒を見てくれていた水無瀬の話じゃ、

帰るときが一番グズったらしい。俺の名前を呼んで泣き叫ぶわ、暴れるわで、大変だったそうだ。



いなくなったらなったで、少し物足りないような気もした。風香が帰ったあと、水無瀬も俺と少し話しをしてから、帰っていった。



「楓の匂い…いつまでもつかなぁ」
「は?」
「明日になったら消えちゃうかなぁ」
「……」
「たまには遊びに行ってもいい?」




「……来れば」



そう応えたのも



深い意味はない。


たぶん。








End.

[前へ*][次へ#]

10/11ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!