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「お邪魔しまぁす……てかさ、髪の毛乾いてないよ?」
「誰のせいだ」
「私、か」
「そー」
「てか電話したんだけどその時お風呂入ってた?」
「そー」


軽く振り向くと、俺の後を風香と水無瀬がしっかりと手を繋いでついてくる。もう手まで繋げてるこいつは一体何モンなんだ…?


「で、風香ちゃんお風呂入れたらいいんだよね?」
「そー。頼む」
「じゃあちょっとお風呂借りますよ?」
「どうぞ」
「風香ちゃん、お姉ちゃんとお風呂入ろっか」



二人は浴室に消えた。



ソファーに沈んで今日一日のことを思い返す。結局自分じゃ面倒見きれなかった。こうゆーことはやっぱ、女の方が向いてんだろうなと思う。けどもし自分に子供ができたら、こんな風に面倒みなきゃなんねぇんだろうな。


…?何でこんなこと考えてんだ…。疲れた。眠ぃ…



うとうとして、はっと目を覚ました。疲れててこのまま熟睡できたはずなのに、俺は焦って目を覚ました。あいつ放っぽったままだ…


「あ、お目覚め?」


水無瀬がキッチンからゆっくりとこっちに歩いてくるのが見えた。


「…風呂」


は、もう入ったみたいだな。髪濡れてるし。微かに俺と同じ匂いがする。


「もうとーっくに上がりましたっ」
「…あいつは?」
「風香ちゃん寝たよ。楓の部屋に寝かせてきた」
「俺の部屋かよ…」


けど、寝たんだな。よかった…。解放された。けどこれがあと2日も続く…。


「かなりお疲れっぽいね?」
「笑うな」
「だっていつも涼しい顔してる楓がすっごい困った顔してたんだもんよ」


ニカニカ笑ってやがる。水無瀬は来たときと同じカッコだ。着替えてねぇ。


「助かった」
「その言葉は感謝してくれてんの?」
「おー…」
「表情は感謝してるように見えないけどな!もっとにこやかに笑ってありがとな!とか言えない?」
「ありがとな」
「うわ!なにそのだるそうな…棒読みだし!」


もう眠ぃんだよ…。けど、ほんとに感謝してる。その。風呂まで入れてくれて。水無瀬をなんとなく直視できずに掛け時計に視線を逃した。




「お前、どーする?」

「あ……もう遅いね。帰ろっかな…」


急に声が沈んだな、と思って水無瀬を見たら、微妙な顔をして立っていた。笑ってんだけど、悲しそうな。そんな微妙な表情。



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