[7]
全部投げ出してしまいたい。
「ママどこ?」
「…病院だ」
「どして?」
「…知るかよ」
説明すんのも面倒くせぇ…。
「ママぁー!!おうち帰る〜!!」
しまいにはギャーと半ば叫びながら泣き出した。俺は心底うんざりして、思わず耳を両手で塞いだ。そんな俺にはお構い無しに泣き方を更にヒートアップさせていく風香。
ここで怒鳴ったらもっと酷いことになるだろうな。けど……この泣き方は尋常じゃねぇ。ほっといたら近所からクレームがくんじゃねぇか…?
「うわ゛〜ん!!ママぁ〜!!」
泣き喚く風香を残して、急いでアレを取りに行った。注意をひけるもんなら何でも良かったんだけど。
「風香、ちょい見て」
素直にこっちに視線をよこしてきたから、俺は人差し指でボールを軽く回して見せた。これが意外に風香の興味をそそったらしく、なんとか泣き止ませることに成功した。
風香は俺のボールを横からひったくるようにして奪い取り、見よう見真似でなんとか回そうと奮闘している。
「危ねぇぞ…」
そんな細ぇ指でボールなんか支えられるわきゃねぇだろ…。案の定ボールはこぼれた。こぼれただけなら良かったもんの、それが風香の顔面を直撃したもんだから事態は更に悪化した。
「ギャー!!う゛わ゛ぁぁん!!」
もういっそのこと俺が家を出たほうが早そうだ…。泣きてぇ。
いつもなら、部活が終わったら風呂に入って飯食ってさっさと寝てんのに。
けど相手は小学生で、自閉症だとかいうアレで。怒れねぇし言っても伝わんねぇし、どうすりゃいいかワカンねぇ。
ある程度予想できてたことだった。けどここまで子守りが面倒なもんだとは…
「ギャぁー!!うわーんっっ」
俺は母さんに助けを求めることにした。どうすりゃいいのか。
『もしもし?』
「俺…」
『どうしたの?』
「風香がグズって泣き止まねぇ…どうすりゃいい?」
『あらら。怒ったりしたの?意地悪なことしてないわよね?』
は…?俺は怒ってねぇよ…。優しすぎるぐらい優しくしてるつもりだ。…ザケンナ…
俺は憤慨した。人の苦労も知らねぇでまず自分の息子を疑うこの人に。
『二人ともお風呂は?』
「まだ」
『あ、風香ちゃん一人じゃ入れないから、アンタちゃんと入れてあげなきゃダメよ?』
「は…?まじかよ?」
『出来るでしょ?』
嘘だろ…?風呂まで俺が?信じらんねぇ…。
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