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あーそんなことより、飯だ。
とりあえずレトルトのカレーでも作っておけばこいつが起きた時に温め直せばいつでも食えるしな。俺がソファーを離れようと腰を浮かせた時、風香がむくっとスローな動作で体を起こした。
起きやがった…。気付かなかったことにしよう。俺は素知らぬ顔で離れた。
…なんで付いてくんだよ……。
俺の後ろをくっついて来る気配を足元に感じる。それでも構わずに、飯の支度を始めた。その横で視線を感じながら。
「何してるの」
手元が一瞬止まる。
喋ったの初めてじゃねぇか…?風香の方を見る。こいつはこいつで、じっと俺の顔を見てくる。
「飯、作ってる」
返事はない。けど相変わらず物珍しいものを見るような視線をよこしてくるもんだから、俺は前を向いて、レトルトのカレーを温めた。
隣には…まだ風香がじっと俺の動作を見つめながら立っている姿がある。
「腹減ってんだろ」
横目にコクリと頷いたのが見えた。
それからまたしばらく無言の状態が続いたけど、飯が出来上がるまでの間も、飯が出来てそれを俺が二人分食卓に運ぶ間も、カレーを前にこうして座っている間も、風香は俺の側をウロチョロと付いて来た。
なんでわざわざ俺の隣に座る…。で何で、俺の顔を見てるんだ?隣に居座る小っこいのは、俺にぴったりと寄り添って俺を見上げていた。
「……食えば」
「うん」
はぁ…。食ったらすぐに風呂入ってさっさと寝ちまおう。これ以上子守りの仕方がワカンねぇし…。なんかすげぇ疲れた…。
「からい…」
隣を見れば、スプーンをカチカチと皿に当てながら眉を寄せる顔が。カレーが辛かったらしい…。一応甘口って書いてあった、はず。俺は何つっていいか分からず、とりあえず食い続けた。そんな俺をまたじっと見てくる…。
「なんだよ……辛ぇのか?」
コクリと頷く…。
「じゃあソレだけ避けて食え」
白い飯だけ食えってのは俺も流石に無茶苦茶だなとは思った…。けどそれ以外に何て言いようがあるのか教えて欲しい。
おい。泣くなよ?その顔は…。
「……何が食いたい?」
俺もドアホウだな。最初にこれ聞いとけば良かったんだ。はぁと溜め息が出てくる。
「ママの作ったハンバーグ」
…聞いても無駄だったな。それは無理な注文だ。
「…無理だ」
「ハンバーグ!ハンバーグ!ママの作ったハンバーグ!」
「…………」
悪夢だ。俺は今猛烈に助けが欲しい…。
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