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家に着いたら電気は一階にだけ煌々と点っていた。少しだけ、ほっとする。俺の部屋には行ってない…。

にしても…何となく怖ぇ…この扉の向こうが。恐る恐るキィを挿し込み扉を開ける。


≪ガチャ…≫




気配がない。静かすぎて、不気味なぐらいに物音がしない。寝てんだろうか…。それならそれで助かる気も………

俺はリビングへと続く廊下を、時々腰を前に屈めて歩いた。廊下に撒き散らされた無数のティッシュを拾うために。なんでティッシュがあちこちに散らされてんのかは知らねぇけど…。

ティッシュを手の中でグシャグシャと一つにまとめて辿ってリビングに到着。扉は開いたままだった。そこで俺が見たのは、泥棒でも入ったんじゃねぇかと疑うほどに荒らされた酷い光景で。

これをやった犯人は…こいつしかいねぇな。


「おい」


返事の代わりにグゥと腹の虫が鳴いた。俺のじゃねぇ。こいつのだ。リビングは悲惨な有り様だが、それをやった本人はソファーに小さく丸くなって気持ち良さそうに寝てやがる。


飯作ってやんねぇと。…その前にコレ全部片付けなきゃなんねぇけど…。俺が…。他に誰がやんだよ…。うんざりはするけど子供がやった失態に本気で怒るつもりはないし、そんなに腹も立たなかった。

冷蔵庫の付近にオレンジジュースのこぼれた形跡があって、それを隠すようにして白いてんこもりの山が出来ていたから。こぼしてしまったジュースをなんとかしようとしたんだろう。

けど全部が中途半端に終わってる。ジュースも出しっぱなしだしティッシュの山も。


まぁでも俺が悪い。こんな子供を一人で留守番させたら……。こうなるもんなのか……?

親ってのは子供のしでかした失敗の後始末ばっかりしなきゃなんねぇんだろうな。

にしても、腹減った………


片付けが済んだら急に腹も減り出して、俺の腹の虫も元気に鳴き始めた。こいつも腹空かしてんだよな。ジュースだけじゃ腹も膨れてねぇだろうし。

起こすか…。けど安眠を邪魔してまで…とも思う。と言うより起こすことで面倒なことがまた増えそうな気がして。

とりあえず、隣に座って上から眺めてみる。
小っこい…。そういや小学生っつってたような。顔なんか俺の手の平より小せぇ。



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