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その姪は、明日の昼過ぎに叔母さんが連れて来ることになっていた。そしたらその時点から俺に自由は無くなる。子守りに拘束される三日間、俺はまともに生活していけるのだろうか。

そして次の朝、例のごとく意気揚々と両親は旅立って、俺は母親の作った朝飯を食らってからいつものように軽くランニングを済ませて朝練に向かった。

まず安西先生に事情を話してから、午後の練習の前に一旦帰宅する了解を得た。



それで昼過ぎ。俺は朝練から帰ったあと飯を食う前に風呂に入って、自分のぶんの(俺のぶんしかねぇが)洗濯物を洗濯機に放り込み、それから食えるものを探して適当に食った。


そんで今、ソファーに座って月バスを読みながらインターフォンが鳴るのを待っている。もう暫くの間は外出さえもろくに出来なくなるだろう。でも朝練に出かける以外は外に出る用事も特にはねぇし…。


≪ピンポーン≫


ああ。一人きりの自由を満喫できると思っていたけどそんな夢も呆気なく終わりだ。

俺は重い玄関扉を開いた。


「楓くん?久しぶりねぇ!」
「お久しぶりです」
「暫く見ないうちにほんと背なんかこんなに大きくなっちゃって〜!叔母さん見上げちゃうわぁ。今身長いくつ?」
「187です」
「うわ〜おっきいのねぇ!楓くん大きいとは聞いてたけど」
「……外…暑いんで、中、どうぞ」

叔母さんと手を繋いだ麦わら帽子がえらく暑そうにダレてたもんだから。


「あ、楓くんごめんね。せっかくの夏休みにこの子預かってもらうことになっちゃって…」
「いや、」
「風香もお兄ちゃんに初めましてって」


叔母さんに麦わら帽子を脱がされて汗に濡れた髪を撫でられているその子供は、笑いもせず、一言も喋ることもなく。俺と目を合わせることもなかった。


「こんな調子でごめんなさいね……。迷惑かけちゃうけど宜しくね?」

ああ、そうだ。俺はこれからまだ学校に行かなきゃならねぇんだ。

「俺これから部活行かなきゃならないんスけど…」
「あ、そうなの?そう言えば楓君バスケ部なんだってね!大丈夫よ行って来て?そんなに遅くはならないでしょ?」
「たぶん」
「大事な時期だもんね。頑張ってね練習」
「…どうも」
「風香も少しの間一人でお留守番出来るわよね〜」

返事はない。麦わら帽子のゴム紐をびよんびよんと伸ばして遊んでやがる。子供って自由で羨ましいなんて思う。社交辞令も必要ねぇしな。



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