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蝉も忙しく喚き散らす夏休み真っ只中。

流川楓は今日も、朝練前に(このクソ暑いなか)ジョギングをこなし、休むこともなくスクールバッグを肩に担ぐと学校へ繰り出して行った。


近頃の流川宅は人の声はおろか、テレビの音や掃除機の音や生活音がまるで聞こえない、それは静かなものだった。普段から(無口な人間の多い家なので)静かな家が更に静まり返っている。

なぜか。それは彼の両親が避暑地へと非難するべく長期の旅行に出かけてしまっているからだった。


息子と姪っ子の風香を置いて。


自分たちだけ暑さしのぎに旅行に出かけてしまうなんて酷い親も居たもんだが、問題なのは……今年小学校に上がった姪っ子の面倒を押し付けられたことだった。


──────……





「と言うわけでね、叔父さんが入院しちゃって詩織叔母さんは身の回りの世話で付きっきりなのよ。だからうちで三日間だけ風香ちゃんの面倒見なきゃいけなくなってね」


つまり、俺がってことだろう…。アンタらは明日から揃って旅行なんだから。


「そー言えば、楓。あんた風香ちゃんに会ったことあったかしら」
「ない」
「じゃあ言っておかなきゃなんないわね」
「……」
「風香ちゃんね、自閉症なの」
「自閉症?」
「分かりやすく言えば脳の発達障害がある子なの。だから…言わなくても理解してくれてるとは思うけど、ちゃんと優しくしてあげてね?お母さんと離れてきっと心細いと思うから。いつもの調子でいちゃ駄目よ」


自閉症って単語事態は聞いたことがあるが、俺に面倒見切れるのか…?その自閉症の子供を。自信は全く、ない。


「こんな大変なこと楓一人に任せるのはほんと悪いとは思ったんだけどね?大丈夫よね?あんたなら。叔母さんが帰ってくるまでの三日間だけだから」
「分かった…けど飯は?」


俺だけならその辺のことは自分で適当にどーとでもやっとくが、そーもいかねぇだろう。


「それなのよねぇ…明日の分は作って行くけど…。あ、あんた彼女いないの?」
「…………は。」
「もしいるんだったら彼女さんうちに呼んで作ってもらって?申し訳ないんだけどってちゃんと丁寧に頼んで。お金はちゃんと置いてくから」


それ以上はまともに聞く気にもなれなかった。まともに応える気もさらさらなかったが。



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あきゅろす。
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