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「あ、ゆかり。私グラマーのノートまだ提出してないからさ。今日、先帰っていいよ」
「え〜?待ってるよ!一緒に帰ろーよ〜」
「ごめん、まだ出来てないトコあるから時間かかると思う。私は大丈夫だから」
「そう?じゃあ明日一緒に帰ろーね?バイバーイ」
「うむ、じゃーねん」


私はどんなに仲の良い友達とも僅かだけど間隔を開けて付き合うの。

決して深入りはしないし
私の知らないことも深追いしない。

家族とも私は少しだけ距離を置いて接してる。こうすることで自尊心を保ってきたし、私なりに上手く付き合ってこれたと思ってる。

だからズカズカと私のテリトリーに入ってくる人間を警戒する。何でって。平穏を脅かされるのが嫌だから。感情を左右されて主導権を握られるのが怖いから。

私は必要異常に臆病者だから当たり障りのない楽な人生を送っていきたいの。


けどそんな惰性的な日常も、三年に進級すると同時に奪われた。初めて同じクラスになった三井 寿に。
チャイムが鳴って下校時間も過ぎて外も暗くなってきた。もー今校舎に居残ってんのって私だけかな。


「あと少し…ファイトだ私。おなか空いた…」


放課後の教室は寂しい。けど好き。お腹の虫が鳴いても小さく響くぐらい静かで。日中の騒々しさはどこへやらって感じで。


≪ガララ…≫


げ。ボーッとしてたら誰か来ちゃった。さー早くやっちゃ…おっ…と


「って、」
「あぢぃ〜」
「三井…」


一番ややこしいのが来ちゃったよ…最悪だわ。しかもなんで上半身裸ー?!!そしてなんで私に寄りかかるー?!!


「ちょ?!三井どいてって!!」
「お、水無瀬。お前いいモン持ってんな」
「は?!」
「それでちょっと仰いでくんねー?」


つーかまじ暑苦しい!!汗が滴って私の机にもポタポタ落ちてきてんですけど…!


「なに。下敷きで仰げって?」
「そそ。ヨロシク」


つか、おい。自分で仰げっての。

「あんた何様なんさ」
「あ?」
「まぁいいや…仰いだらとっとと消えてよね…私忙しいんだからさ」
「そーいやお前なんで一人で居残ってるわけ?」
「コレ…出し忘れ。だから忙しいんですー」
「うわ!ダセェ」
「あんた部活は?」
「終わったって。時計見ろよ」
「てぇか!!もうっ自分で仰げば?!」


あんた笑うけどさ。私は人力扇風機ですか。ほんといい加減人を使うのやめて頂きたいわ。



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