[5]
「なに謝ってんの……」
「恥ずかったんだよ。顔上げろって…」
上げられるわけないじゃん。化粧たぶんぐしゃぐしゃなのに。可愛くない顔がさらに可愛くないのに。
「愛想尽かされる…」
「誰が?」
「わたしが……」
「アホ!」
また三井がアホって言った。けど三井が私に対して吐く暴言には、いつだって優しさがこもってたのに。私はそれに気付いてたのに、やっぱり女は恋をすると不安でさ。
優しくされないと悲しくって悲しくって…泣いちゃう生き物なんだよ。面倒だけど。
三井は黙って、私から段ボールを奪い取り。
三段全部積み上げて持ち上げた。
一番上にはノートを乗せて。結局全部持てるんなら最初から全部三井が運べば、私はまた惨めな泣き顔をアンタに見せなくても済んだのに。と思った。
「重くないの…?」
「重いに決まってんだろ!!!!」
「持つって…」
「いい」
「ノートだけでも持つってば」
「しつけーな!!今俺に話しかけんな!!気ぃ抜いたらヤベェんだよ…っ」
「ご、ごめん…」
額に汗して、首と腕に血管浮き出して、眉根を渋く寄せて。ハァハァ言いながらも全部運びきったアンタを
私は心底カッコイイと思ったわよ。
惚れ直したわよ。
けどやっぱりアホだな、と思った。
でもアホな三井に惚れてる私は、すっかり乙女になっちゃってんだと……思います。
End.
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