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「これ。全部運べだと」


三井がずっしりと抱える“これ”とは、提出して採点済みのグラマーのノートだ。クラス全員の分と、他に…


「これも…?」
「それも…」


段ボールが3つ縦に重なって小さな塔が立っていた。


「…何入ってんのコレ」


一番上の段ボールのフタを開けてみたら文化祭で使うポスカやガムテープやその他諸々(ごちゃごちゃしてて訳分からん)がぎっしり詰まってて…。


「これって実行委員の仕事なんじゃないの?なんでうちらが」
「実行委員は今召集されてんだろ」


最悪…。
ともかく運べってか。


「夏樹と三井くん、大変そうだね。私、手伝おうか?」

背後から声をかけられて振り向いたらクラスでも一際輝く可愛い子ちゃん(私はオヤジか)の岡島優子が相も変わらず愛くるしい笑顔で立っていた。

優子ちゃんは美人な上に愛想も良く、優しい良い子だ。天の神さんは二物を与えたもうたが世の中はどこまでも不公平。そして私みたいなオンナオトコ(三井いわく)には厳しいものだ。


「けど優子ちゃんのその細い腕じゃとてもじゃないけど運べないよこの段ボールは…」

細くて白くてちょっと捻れば折れそうな腕と自分の腕を比べたら、ほんと悲しくなるわ…。私、たくましすぎ。


「岡島。このノート持ってくれ」
「あ、うん」


げ。持たせるのかアンタ。容赦ないな。まぁノートだけど…。優子ちゃんは当然のようにモテるし、男子なら今の状況をやれチャンスだとはりきるだろうに。例えば“俺が全部運ぶから君たちは先に教室に戻っていたまえ”とか?

自分の発想力の陳腐さには乾杯だけども。


「なにボケッとしてんだ。お前はその段ボール一個持て」


うっそ。なにこの差?!
やっぱ三井も他の男子と同じじゃん!! 微妙に優子ちゃんの負担軽くしてるじゃん!!

優子ちゃんはノートで私は段ボールかよ…。てか私、一応アンタの彼女なんですけどもー。


「三井君…だ、大丈夫?一気に段ボール二個も…」
「よゆーよゆー」


なんだその笑顔……はは。カッコ付けてんのか知らんが私に段ボール一個持たせてる時点でマイナス100ポイントだっつーの。



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あきゅろす。
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